ヘイトスピーチと対抗報道

ニュースなどでもヘイトスピーチに関しての報道が後を絶たない。法律的な観点で行っても2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(通称:ヘイトスピーチ解消法)」が制定されてからもなお存在している。

しかしここ最近ではヘイトスピーチに対しての対抗報道も出てきているという。本書はそのヘイトスピーチの現場とネットとそれに対しての対抗・批判はどうなっているのかを取り上げている。

第1章「ヘイトスピーチと報道」

2016年の法律制定以前から地域で「条例」としてヘイトスピーチ規制に関しての条例があった。特に川崎でも同じように存在していたが、全国に先駆けて2019年には条例改正で刑事罰といった罰則付きにすることとなった(施行は2020年7月)。このヘイトスピーチがメディアに現れ始めたのは、2013年あたりの時である。このときに韓国・北朝鮮・中国などに対しての排外的なデモが行われたことが始まりだった。

第2章「ヘイトの現場から」

この川崎がなぜヘイトスピーチの条例について先行して取り入れたのかというと、元々川崎ではこのときあたりにヘイトスピーチが行われるようになり、大規模なデモ、もしくは反対デモとの衝突なども起こっていた。本章ではこのヘイトデモ、さらには反対デモの動きについて写真と共に取り上げている。

第3章「ネット上のヘイト」

ヘイトの中でも特に陰湿な部分としてあげられるのがネットである。特に差別投稿や侮辱投稿を行っているケースも多々あり、中には自殺に追い込まれる人も少なくない。法整備も進んではきているものの、ヘイトデモとは異なり、今もなお行われ、なおかつ裁判になってもやめないケースまである。ただ国内外を見てみると、海外では高額の制裁金を求めるものまであり、どのように法整備したら良いかを含めて言及している。

第4章「官製ヘイト」

本章では朝鮮学校の無償化政策に関してのことを取り上げている。またそれに絡んで教育に関しての差別について糾弾を行っている。

第5章「歴史改竄によるヘイト」

そもそも「歴史の解釈」となると、ヘイトの火種になることが数多くある。もっとも第二次世界大戦前後の出来事については歴史的な議論が未だに残っており、その歴史的な解釈の違いから国家間の対立も起こっている。

第6章「ヘイト包囲網」

ヘイトスピーチ自体が犯罪になりつつある。最初にも書いたとおり、川崎市では罰則のついた条例とするようになったが、日本でも侮辱罪や名誉毀損罪の解釈により、ヘイト自体を刑事罰として罰する方向へと向けられるようになった。実際に民事訴訟も行われている。

ヘイトに関しての動きは国・地域によって動きを見せているのは事実である。ただこの「ヘイト」を考えて行くにあたり、一つ疑問を持っている。それは「逆差別」に対してはどうなのかと言うことである。差別撤廃の動きを見せる中でまたちがった差別ができ、「ヘイト」に転じることもあるのではないかとも考える。そう考えるとヘイトや差別を是正・改善するまでの道は遠いように思えてならない。

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