疫病と投資 歴史から読み解くパンデミックと経済の未来

「疫病」と「投資」と言うと、相容れないように見えて、実はある程度関係がある。それはパンデミックといったかつては新型インフルエンザ、現在では新型コロナウイルスなど感染が急拡大して、それを収束させるために、様々な研究が行われ、ワクチンや薬の開発が行われる。その財源には国のお金も入ってくるのだが、その一方でファンドが設立され、そのファンドの投資によって資金源となり、研究開発に着手できるといったものもある。

実際に証券会社によっては投資信託などの金融商品の中にはこういった新型コロナウイルス治療やワクチンでのファンドが作られている所もある。

しかもそれは今に始まったことではなく、ペストが蔓延していた中世ヨーロッパの時代から存在していた。本書はそのパンデミックなどの疫病と投資の関連について歴史とともに紐解いている。

第1章「ペストは中世ヨーロッパ体制を破壊した」

新型インフルエンザにしても他のウイルスや感染症にしてもある一つの疫病を除いて根絶されていない。根絶ができたのは唯一天然痘のみである。

また本章で紹介されるペスト(黒死病)とされている。実はこのペスト自体は複数回にわたって感染爆発が起こっており、その1回目が14世紀においてヨーロッパのみならずユーラシア大陸・アフリカ大陸でも流行し、諸説あるとは言え多くて2億人死亡した。

元々中世ヨーロッパでは封建社会が崩壊するようなこともあった。また宗教に関してもローマ教皇庁の権威が失墜し、宗教改革をせざるを得なくなったという。

ちなみに先ほど「複数回」と書いたのだが、後に17世紀、18世紀と場所は異なれどペストが感染爆発が起こった。

第2章「第一次世界大戦の戦況を左右したスペイン風邪」

今から約100年前に日本で言う所の毎年秋~冬にかけてスペイン風邪が大流行した。推計では全世界で5億人感染し、死者も数千万人にのぼったとされている。しかもスペイン風邪が流行しだしたときは第一次世界大戦の真っ只中にあり、スペイン風邪の罹患・死亡が国によっても異なっていた。その影響が世界大戦における徴兵にも影響を及ぼし、終結を早めたという論者も少なくない。

第3章「短期化する新型ウィルスの流行」

新型ウイルスの誕生自体はすでに珍しいものではなく、2000年以降になると、SARSやMERS、2009年の新型豚インフルエンザ、そして今も起こっている新型コロナウイルスとわずか21年の間にいくつかのウイルスが生まれ、流行している。特に新型コロナウイルスについては変異を繰り返し、現在では第5波まで流行の波があり、これから第6波も起こるとも言われている。なぜ新型のウイルスが次から次へと生まれているのかを本章にて取り上げている。

第4章「感染症と共存していく社会へ」

人間誰しも感染症やウイルスに対して忌避感を持ってしまう。特にウイルス自体は冒頭でも取り上げているのだが、天然痘を除いて根絶されていないのが現状である。もちろん現在では「wishコロナ」と言われるように共存することも必要という主張を行う論者もいる(逆にゼロコロナを主張する論者もいる)。過去に感染が流行した感染症ともどのように付き合っていくか、と言うのが考える必要があり、経済の面ではどのような動きを見せているかを取り上げている。

第5章「格差の拡大をデジタル化が是正する」

もはや「デジタル化」の波は止まらず、出張を行う事なくZoomなどのテレビ・ネット会議などで済ますことができるようにまでなった。とりわけコロナ禍によりデジタル化の波はさらに早くなる一方で、デジタル面での「格差」も生じている。地域的な「格差」は是正できたとしても、デジタルを導入できるかどうかの「格差」は是正できないどころか広がりを見せている。

第6章「地球環境問題とエネルギー政策の転換」

地球環境問題についても、経済的な側面はどうしても出てくる。特に毎年起こる台風・水害などの「災害」は経済的な打撃になることも少なくない。またエネルギーに関しても災害や環境の変化などにより変わっていくこともあるため、それをいかに転換していくかも課題としてある。

今日では感染症もあれば災害もあると行った悪い状況が立て続けに起きている状況にある。そこから復興あるいは収束させるために何をすべきか、そしてそれらと共存していくためにはどうしたら良いかをそれぞれで模索している。もちろんそれらのことは経済にも密接に関わることがわかる一冊である。

ただ一つだけ苦言を伝えると本書は投資に関しての言及がほとんどない(あっても終章に投資戦略があるだけである)。タイトルとしては「疫病と投資」ではなく、「疫病と『経済』」とした方が適当ではないかと考える。

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