スポーツ現場における暑さ対策ースポーツの安全とパフォーマンス向上のために

今でこそ、季節は秋になり、やがて冬となるため過ごしやすい。場所によっては「寒い」と言える所になるが。しかしながら今年の東京オリンピックは記録的な高温で「暑さ対策」が求められることが多かった。とりわけ競歩やマラソンに至っては札幌市で行われたのだが、そこでも記録的な暑さによる途中棄権が続出したという。

もっともマラソン・競歩のメダリストを獲得した方々は速さと言うよりも対策を行った事による「強さ」が際だった大会だったように思えてならない。また日本でも陸上競技における「暑さ対策」は大きな課題となって残った。そこで本書である。スポーツの現場では特に夏になると出てくる「暑さ対策」。それをどのように行っていけば良いか、本書はそのことについて取り上げている。

PartⅠ「基本編」

運動におけるパフォーマンスは気温などの外的な環境に大きく左右される。私自身もウォーキングをはじめ運動を行ったことがあるのだが、特に真夏の時には思っているほどパフォーマンスを発揮できなかったことを身にしみてわかる。

特に熱中症は大敵であり、それによって命の危険にさらされる人も少なくない。さらに真夏になると外の気温のみならず、会場におけるグラウンドの表面の気温、よくある「路面温度」なるものもあり、それによってパフォーマンスにも変化を及ぼす。

PartⅡ「実践編」

ではどのように暑さ対策を行っていけば良いか。一つは水分補給であるのだが、単純に水だけを与えるのは間違いである。むしろ体温を低下するために汗を出す必要があるため水分と塩分を摂取すると言ったことが必要になってくる。また「暑熱順化(しょねつじゅんか)」の意味と重要性もまた取り上げている。

また本章では女性や子ども、身体障害者それぞれに合わせた暑さ対策も併せて取り上げている。

PartⅢ「スポーツにおけるコンディショニング」

スポーツにおいてコンディションを整える、いわゆる「コンディショニング」は非常の重要な意味を持っている。ではどのようにしてコンディショニングを行い、パフォーマンスを向上させるべきか、内的・外的様々な要因を想定してトレーニング、さらにはリカバリーなどの戦略を行う事が必要になる。本章では特にトレーニングよりもリカバリーが中心となっている。競技関係者の方々であれば当たり前の内容と思われがちだが、細かく読んでいくとその中でどこの所で効果的な「暑さ対策」になるのかが良く分かる。

今年の東京オリンピックは大会前・後の所で「暑さ対策」が中心となった。もっとも夏の大会になってくると陸上はもちろんのこと、様々な競技において「暑さ」が大きなネックになってくる。暑さに強い選手もいれば、逆に暑さに弱い選手もおり、それぞれの選手に合わせてどのような対策が必要なのか見ていく必要がある。本書は論文であるのだが、特に競技を行っていく方々であれば是非目を通した方が良い一冊と言える。

コメント

タイトルとURLをコピーしました