「安全」と言う言葉は尊いのだが、それを求めて見つけられるまではなかなか難しいのかも知れない。ここ最近では新型コロナウイルスにより、安全という言葉がより重要になる一方で、それが非常に難しいことが痛いほど良く分かる。
本書は3.11以前にとある少年の死を巡った事故と、反対でもとの出来事が交錯し、そして謎の感染症や3.11と、「分断」が多く起こった。その分断によって人は傷つけ、傷つけられといった世界で様々な感情が入り乱れながら、祈りを馳せる物語である。
逃亡生活を描いているのだが、そもそも物理的な逃亡だけでなく、分断している人間関係や感情との「逃亡」といった精神的な側面も描かれており、昨今の状況ともある意味マッチしており、身につまされるような思いだった。しかしながら本当の「安全」とは何か、そしてそれをどうやって手に入れるのか、そのことを考えさせられた一冊でもあった。
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