空調服を生み出した 市ヶ谷弘司の思考実験

「服」と言うと体温の調節ができるものであり、なおかつ自分自身の容姿を良くするツールでもある。特にここ最近では寒くなってきているため、暖かくする装いとしても役立つ。しかしその一方で夏になってくるとどうしても服を着る必要があるのだが、熱中症対策がどうしても必要であり、それをおこなわないと、熱中症はおろか、暑さによって仕事に対しての集中力が低下してしまうリスクも伴う。

それを回避するために作られたのが「空調服」であり、本書の著者はこの空調服の開発者、もとい株式会社空調服の代表取締役会長も勤めている。なぜこの空調服ができたのか、また空調服ができたきっかけとなる「思考」とは何かを取り上げている。

1章「空調服を生み出した思考実験」

「空調服を生み出す」ためには、数多くの試行錯誤を行っていたことを察する。しかしその「試行錯誤」は、むしろ『思考』錯誤を繰り返していたという方が正しいのかもしれない。というのは思考実験を繰り返し、生み出していったともいえる。

2章「世界と自分を問い直す思考実験」

そもそも「思考」となると、自分自身の持っている世界をどうしても比較したがってしまうのだが、実際にはそうでなく、今ある世界と自分自身とのギャップを比較して、何が必要なのか、何に不満なのかなどを「問い直す」ところでの思考もある。本章では、その空調服の元となるための土台の思考実験として取り上げている。

3章「未来を読むための思考実験」

未来のことは誰にもわからない、といわれるかもしれない。しかしながら太陽がどう昇っていくかなど、わかる範囲もある。過去にどのようなことがあったのだから、今後はこのようなことが起こるといった未来予測もまた存在する。本章ではスマートフォンなども含めたテクノロジーはどのように進化するのか、という予測を踏まえた未来予測の思考実験を取り上げている。

4章「影響力を可視化する思考実験」

「影響力」というと、どうもインターネットの人気、さらにはメディアなどの世論を動かすことができるのかという「影響」に目が行くのだが、本書はあくまで「空調服」の事を表している。そのため風や暑さといった、物理的な「影響」はもちろんのこと、空調服ができることによっての世界的にどのような影響を及ぼしていくのかを表している。

5章「可能性を見極める思考実験」

新しいものを開発する際には、様々な「可能性」を見出すことが大事である。もっともその可能性をどのように引き出すかという思考実験が本章にある。

6章「エネルギーについての思考実験」

最後はエネルギーである。エネルギーと言っても水力や火力と言った発電を連想してしまうのだが、本章では地球の影響とを合わせて、エネルギーをどう作り、使っていくかという実験を取り上げている。

新しいもの、斬新なものなど出てくるものには必ず「思考」が伴う。もちろん何もないところから斬新なものを生み出すことは非常に難しい。ではどのようにして実験を重ねていくべきか、本書は空調服の開発で使った「思考実験」をモデルケースにして、「考える」きっかけを作ることのできる一冊と言える。