「作家」と言う仕事は儲かるように見えて、実はピンからキリまでの幅がかなり広い。ベストセラーを連発して稼げる人もいれば、雀の涙ですら稼ぐことのできない作家までいる。そのベストセラーを連発、さらにはメディアミックスまで果たして億単位で稼げる人もごくわずかであるが存在する。そう考えると夢のような職業なのかというと、先ほど書いたように実際にはそうなっていくのは一握り、いや「ひとつまみ」と呼ばれるほどの数である。その現状と、作家としての仕事などについて取り上げているのが本書である。
第1章「作家の異常な愛情」
著者自身「仮想戦記」やライトノベルなど、数多くの小説を上梓している。もっともライトノベル自体も仮想戦記を持ち込むほど、仮想戦記ものが中心の作家と言える。その著者は他の仕事を兼業しているわけではなく、完全に「作家」一本で活動を行っている。
そのためか作家として高い矜持を持っており、愛情も深い。その深い愛情を持っているが故に、今を取り巻く環境に対して危機感を抱いているという。本章では小説を含めた作家業界の現状を取り上げている。
第2章「原稿に体を張れ」
物語を紡ぐために原稿に色々と書くのだが、その原稿を見せて、出版までに至るまでには長い道のりがある。特に新人になってくると企画などを売り出す、あるいはプロットも含めて書き続けつつ、様々な文学賞などの懸賞に申し込むといった動きもある。しかし出版にこぎ着けるまでには書き続ける事が求められる。もちろん「ただ」書き続けることが全てではない。どのようにして作品を生み出していくか、参考資料をもとに明かしている。
第3章「機械仕掛けの編集者」
小説の世界は私自身知らないが、ビジネス書などの編集者の方々と関わりをいくつか持っており、その内情もある程度知っている。特に新人作家を発掘するための講座やセミナーなどもあるのだが、その流れについては「今すぐ本を出しなさい ビジネスを成長させる出版入門」と「ベストセラーの値段 お金を払って出版する経営者たち」が詳しい。
商業出版を行うにあたり、編集が必要になってくるのだが、その編集者は会社、もとい人によりけりであるが「売れる本」かどうかを前提に見きわめる傾向が多くある。もちろん出版社も「会社」であるため売上が大切であるのだが。また実際に企画が通り、さらには作品を完成して世に出る頃には今度は販売促進を行うといったことも必要になってくる。その一つとして「献本」がある。当ブログでも献本を受けており、記事にしている。
第4章「フル・メンタル・ジャケット」
ハートマン軍曹からの罵倒を連想してしまう章である。しかしながら作家の仕事は「売れる」だけでなく、「続けられる」こともまた一つのステータスである。売れない中で書き続け、世に送り出し続けることも一つであるが、それも作家自身の努力だけでは難しい。特に出版社・編集者をはじめとした方々の支えも必要になってくる。
また他にも作品を作るまでのスケジューリングについても、作家や著書を出す頻度によって変わってくるのだが、人によっては過酷なものになると言う。
第5章「出版と欲望」
いざ出版をするとなると、どれくらい売れたのか、重版がかかったのかなどが気になってくる。それは作家もそうであるが、特に編集者にとっては会社の売上につながるという。
その出版を巡っては色々な「トラブル」があり、著者自身も数多く体験してきた。その体験談が綴られているのだが、私もさることながら、出版の中にいる方々にとっても目を疑う話ばかりであるが、もちろん実話である。
第6章「アイズ・ワイド・オープン」
著者が作家の中で最も中心としているのが「仮想戦記(本書では『架空戦記』となっている)」であるが、そのジャンルの衰退を憂いている。その現状を訴えるとともに、これからの作家人生を綴っている。
小説を中心とした作家の「生の声」や「体験談」がふんだんに盛り込まれており、私自身も作家や編集者とは関わりはあるものの、それでもわからない側面が多くあった。これから小説家を目指そうとする方、あるいは小説でなくても作家を始めたいという方であれば、もちろん企画や物語を書くことも必要であるが、こうした現役作家の方々の話に触れることも必要である。その「話」が本書にある。
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