AI時代の労働の哲学

「労働観」や「労働哲学」の変化は時代と共に変わってきている。特に新型コロナウイルス感染拡大により、労働のあり方は急速に変わっていった。それ以前にも在宅やリモートを含めた「テレワーク」の概念の誕生と拡大によること、さらには日本・海外に関しての労働的な事故・事件などもあったことで、変化をしている。日本ではできているかどうかは不明だが「働き方改革」が印象的である。

さらに働き方というと技術革新によるところもある。それはパソコンやアプリ、通信などの革新もあれば、AIも身近な存在となったことも考えられる。本書はそのAIが広がりを見せた時代の中で労働の変化はどのようになってくるのかを取り上げている。

1.「近代の労働観」

近代的な「労働」に関してのあり方を哲学的に考察を行った人物としてカール・マルクスやジョン・ロック、アダム・スミスなどが挙げられる。それぞれが主張した労働について取り上げているのが本章である。

2.「労働と雇用」

よくある雇用のあり方もあれば、個人事業主などになってくると、仕事を受託、さらには請負をするといったこともある。もちろんそれらは仕事やプロジェクトに対して、仕事における授受関係といったものがある。さらには複数人勤める会社になってくると「雇用」と呼ばれる、人材の「採用」と呼ばれるものも関わってくる。

3.「機械、AIと雇用」

「AI」とを考えると、労働というよりも作業を行うための「機械」を採用して、動かすといった事が挙げられる。そのことを考えると「利用」であり、「雇用」というにはほど遠いイメージであるのだが、哲学的に考えると「雇用」と考える論者もいる。ではなぜ「雇用」と考えるのかを本章にて考察を行っている。

4.「機械、AIと疎外」

AI自体もディープラーニング(深層学習)により、知識の「進化」と「深化」が行われている。またそのことによって労働現場にも役立てられるのだが、労働の中である「疎外」と呼ばれる様な概念がある。それは「AI」導入によってどのような影響を及ぼすのか、そのことについて取り上げている。

5.「では何が問題なのか?」

ではAIの導入によって労働観や資本主義などの「思想」そのものは変わるのかどうか。もちろん細かい所では変わるとは言えど、おおまかな部分は変わらないと言える。しかしそこに問題があると著者は主張しているのだが、その本質を列挙している。

労働をはじめとした思想は、技術と比べると、深淵の部分に入ってくる。一方で技術や方法と言ったものはむしろどのように行うかと言った小手先の部分のため、意外と浅い面と言える。それらの考え方の事がよくわかる一冊と言える。