ビジネスの世界にも「コーチ」があるが、もっともコーチング自体はスポーツの中での所が有名である。それはクラブチームなどの団体において、指導をする立場、あるいは方向性を示す立場として「コーチ」は存在する。本書はあくまでスポーツにおけるコーチ、もとい「コーチング」とはどのようなものか、そのことについて取り上げている。
第1章「コーチングを哲学する」
世界的に有名なスポーツの「コーチ」はゴマンといる。もっとも下々の「コーチ」も含めても数え切れないのだが、傾向も人それぞれである。生活面も含めて深く関与するコーチもいれば、放任にして自主性を育てるコーチもいる。そもそもコーチはどのような存在なのか、その本質を取り上げている。
第2章「善いコーチを考えるために」
名選手、名監督にあらずp.71より
とあるが、実際に名選手で名監督だった人物も何人かいる。野球で言うと落合博満や長嶋茂雄、王貞治や野村克也。サッカーで言うとドラガン・ストイコビッチなどが挙げられる。
もっとも選手でパッとしていない活躍だったとしても指導の立場で花開いたという人も少なくない。逆に選手で活躍してもコーチを行うとそうでもなかった人もいる。
またチームなどの事情によってコーチングが発揮できないといったこともある。色々な状況を考えて「善い」コーチはどのような定義なのかを取り上げている。
第3章「目的論から考える善いもの、勝利至上主義、スポーツの意義」
特にスポーツになると勝ち負けがあるため、「勝利」を重視しているが、プロチームであれば勝利だけでなく、パフォーマンスや勝負内容なども重要視され、さらに学校やリトルチームなどになると勝負の世界、さらにはスポーツを通じて「人間教育」と呼ばれるものが重要になってくる。
そう考えると全ての世界は「勝利」だけが目的ではなく、勝利も大事だが他にも大事なものがあることがよくわかるのだが、しかしながらなかなかそうならないのもコーチの事情でもある。
第4章「コーチの「幸福」とは何か」
コーチの立場から、どのようなことが「幸福」なのか。考えていくとなかなか難しいかも知れない。スポーツの世界のため「勝利」も一つであるのだが、それ以上に大事なことがあることを考える方々もいる。本章では一般的な見解も含めて取り上げている。
第5章「コーチングの技能」
コーチングを行っていくにも「技能」がある。もちろん先述を考え、伝えることもあるのだが、他にも「人」を動かす立場であるため、どのように動かす、あるいは背中を押すかなどが必要となってくる。その中である「技能」となるとどのようなものがあるかを取り上げている。
第6章「「思慮」をもつとはどういうことか」
「思慮」はコーチの立場の中ではけっこう必要な要素である。それは知識や戦略が長けているだけでなく、選手たちそれぞれのメンタルや価値観を鑑みながらどのように戦いを組み立てて行くのかの「視野」「俯瞰」などが入ってくる。
第7章「コーチに求められる「人柄」とは」
コーチにしても、関わってくる選手にしても先ほども言ったとおり一人の「人間」である。その人間であるからでこそ、考え方・価値観が大きく異なってくる。それをうまくまとめ上げ、尊重することも一つであるが、それができる要素として「人徳」がある。かなり曖昧な要素であり、どのように身につけたら良いかが難しい分野であるのだが、人と関わるからでこそ、他の要素に比べると重要度は増している。
第8章「コーチとアスリートの関係性―友愛と人間観」
コーチと選手との関係はどのようなものか。その一つとして本章で言うところに「友愛」が挙げられる。とある元政治家が声高に主張しているのだが、本章はそれとは異なり、2人以上で、多くても数十人、数百人規模の選手たちとをどう心を通わせるか、信頼関係を結びつけるかと言ったものが挙げられる。
本書はスポーツにおけるコーチングのことを取り上げてきたのだが、私自身は個人的にスポーツをやるだけで、運動部やスポーツクラブに入っていたわけではないため、コーチと選手の間にどのような関係を持てば良いかは分からない。しかしながらコーチもいろいろであり、選手もいろいろであるからでこそ、その関係の中で本当の意味で「色々な」ことがある。それをより良いものとしていくために、コーチの立場から「コーチとは何か?」「コーチングとは何か?」を考える、あるいは原点回帰するための一冊と言えるのかもしれない。
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