リーダーシップというと、よくあるのが「ビジネス」の場におけるリーダーシップを想像することが多い。現に書店でも「リーダーシップ」となると、ビジネスの場におけるリーダーシップの本がほとんどである。
しかし本書はそれらとは大きく異なる。確かに「リーダーシップ」の本ではあるものの、人類が生まれる前から誕生、さらには人類が進化していく長い歴史のなかで、どのような「リーダーシップ」があったのか、時代背景と形態においてどのように変化をしたのかを取り上げている。
第1章「人類以前のリーダーシップ」
ヒト(アウストラロピテクス)が生まれる前のリーダシップであるが、サルなどの動物における縄張りと、その中でのボスに当たる「リーダー」がどのような役割なのか、動物行動学においての「リーダーシップ」を取り上げている。
第2章「旧石器時代以降のリーダーシップ」
人類が誕生し、旧石器時代に入った頃にはどのような「リーダーシップ」が遭ったかというと、狩猟や採集を通して、生活を送るようになった。その経験をどのようんして積んでいき、他に伝えていくか、と言う役割になってくる。会社で言う所の「ナレッジ管理」などがそれにあたる。また人類は言葉を発するようになるのだが、その言葉もある種グループだけに通じるようなものであった。
第3章「農耕以降のリーダーシップ」
農耕を行うようになり、自ら食物を生産するようになると、いよいよ現在の人間の「リーダーシップ」に近づいてくる。それはメンバー間の争いを調整しながら、指揮をおこなうといったものに変わっていった。
第4章「四大文明の誕生以降のリーダーシップ」
文明が起こると、「国家」ができ、役割ややることも多様化して行く。そのため専門性を持つメンバーも出てきており、それらをいかにしてまとめ上げて、利害を調整する役割がリーダーに求められた。
第5章「ルネサンス以降のリーダーシップ」
中世から近世に入ってくると、それぞれで国を作り、領土拡大などで争うことが頻繁にあった。その中での国の王はもちろんのこと、小さい組織の長といった役割もさらに多様化されていった。その中で求められる要素としては、その国・組織における「ビジョン」や「目的」を示すリーダーである。それらは言葉の他にも、自ら態度で示すこともある。
第6章「インターネット以降のリーダーシップ」
やがて時代は現代へと移っていき、インターネットが隆盛している時代へとなる。時ジョンを示し、投げかけることは前章での時代でも取り上げられているのだが、底に弱者の立場にも立ちながら、代替案を提示することも必要になってくる。もっとも「組織」と言う言葉自体も、多様化しており、自分自身の中で大小問わずにつくることができるようになった。さらに言うと「国」といった概念も取っ払い始めてきているなかで、新たな「格差」が出てきている。「スーパーリッチ」にも出てくる、新しい貴族たちも生まれた中で、求められるもの、そこに「弱者」と「代替案」がある。
よくあるビジネス書におけるリーダーシップを「狭義」とするならば、まさに本書は「広義」のリーダーシップと言える。つまりはビジネスに限らず、どのような場・動物でも「リーダーシップ」は存在する。もちろん動物にもよるのだが、とくに動物によっては「女王」や「ボス」といった立場もある。それらは日本のように国家などのものをつくるというよりも、「縄張り」など自然とした共同体をつくり、「組織」となって、その頂点に立つ存在ができたのである。
まさに本書における「リーダーシップ」がそのことを言っており、それが生物、もとい歴史と共に「変化」していることがよくわかる一冊である。
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