近年は新型コロナウイルスの感染拡大により、様々な業界にて苦境の状況が続いており、倒産や閉店も続いている。昨年は特に顕著であった一方で、今年は何とか落ち着きつつあると言った所なのかも知れない。
本書の舞台となる呉服問屋はコロナに限らずとも、呉服業界の苦境と同じように、厳しい状態が続いていた。そんな中で銀行マンでありつつ、企業再建に乗り出す大男が、京都の呉服問屋の再建に乗り出した。銀行マンというとカネが中心となり、なおかつ冷たく狡猾なイメージを持たれるのだが、本書の銀行マンは京都ならではの地域・人々に触れ、緊迫感の中にも、人間味を溢れ出すような人を描きつつ、銀行マンの心情の変化が何とも魅力的だった。
企業再建を中心に描いているのだが、そういった人間模様と銀行マンとしての矜持の狭間と京都の風情が全て楽しむことのできる一冊であった。そう言う意味で「五色」と名付けられたのだろう。
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