白医

本書はミステリーでありつつ、終末医療のことも描いている。というのは不審死の事件として取り上げてはいるものの、末期を迎えた患者は本当に死を選んでいるのか、また生を選んでいるのかはわからない。しかしながら、ただ生きるだけでの地獄よりも、自分の意志のあるときに「死」を選び、延命治療を拒否して死ぬといったことがある。

かつて当ブログでも「尊厳死」「延命治療」に関しての本を取り上げてきたのだが、その中で考えてきたことが全て物語として出てきたとも言える。

ミステリーというと殺人事件から解決していく。その動機として恨み辛みといったことがけっこう多いのだが、本書は犯人にしても、被害者にしても、その被害者の家族にしても、恨み辛みというよりも、どういう風に「救う」べきかという、永遠の「問い」を残した一冊と言える。