タテ社会と現代日本

今年の10月12日に本書の著者である中根千枝が逝去した。94歳だった。

女性初の東大教授、学士院会員、そして文化勲章受章と多くの栄誉の足跡を歩んできたが、その根底として、古来から日本にあった「タテ社会」の研究に終始した。その結晶が1967年に、講談社現代新書から「タテ社会の人間関係」が上梓され、数十年に渡ってロングセラーを記録した名作にまで昇華した。

その著者の最期の一冊が本書である。「タテ社会の人間関係」から実に52年の月日が流れ、時代はどのように変わっていき、これからの「タテ社会」はどのように変わっていったのかを取り上げている。

第一章「タテの関係とは?」

日本の社会構造は他国と比べて独特という見方もある。その一つとして「タテ社会」と言ったものが挙げられる。そのタテ社会はどのような仕組みでなおかつ、日本で醸成されていったのかを取り上げている。

第二章「タテ社会と「いま」」

本章がおそらく「現在」の象徴付ける章と言える。昨今の社会ではタテ社会は少なからず存在するものの、会社や仕事などにおいては薄れ始めてきている。とは言えど、見えない「ヒエラルキー」は未だに存在しており、未だに「空気」の中で蔓延っている事を指摘している。

第三章「「タテ」の発見」

なぜ「タテ」なのか。それは日本独特のものであると書いたのだが、実はかねてから「士農工商」と呼ばれた身分の時代もあり、なおかつ貴族や平民、農民といったものもあった。それを考えてみるとインドやイギリスにおいて、前者は「カースト制」が未だに残っており、後者も階層の名残が残っており、そちらもある「タテ」といった概念がある。

第四章「これからのタテ社会」

ではこれから「タテ社会」はどうなっていくのだろうか。会社などにおいて形式的な「タテ」は少なくなってきている一方で、空気の面、さらには経済的な面での「タテ」は未だに存在しており、なおかつそれが強く残る事を指摘している。

そもそも「タテ社会」に限らず、階級や格差といったものは人間のみならず、動物においても存在している(女王蜂やボス猿など)。そう言う意味では「タテ社会」は永遠になくならないが、少なくとも「タテ社会」の本質の部分は時代と共に変わっている事がよくわかる一冊である。