明治神宮 内と外から見た百年

毎年初詣客で賑わう明治神宮。例年であれば、大晦日から元日にかけて「終夜参拝」が行われていたのだが、一昨年の大晦日から昨年の元日は行われず、今回2年ぶりに「終夜参拝」が行われるようになった。オミクロン株の拡大の懸念もある中で多くの参拝客で賑わったという。

ニュースになったかどうかは不明だが一昨年の2020年11月に鎮座100年を迎え、「鎮座百年祭」が「静かに」行われた。元々明治神宮が都心でありながら厳かな雰囲気を醸しているのに加え、新型コロナウイルスの第3波が始まろうとした時であり、とても騒げるムードではなかったことも背景としてある。

「明治」神宮であるが故に祀られている神は、明治天皇とその皇后にあたる昭憲皇太后がある。明治神宮は大正、昭和、大東亜戦争の空襲による消失をはさみ、平成、そして令和と100年の年月を見守ってきた。また神宮には多くの要人も参拝した。本書は明治神宮の足跡を追っている。

第一章「世界が空に夢中だったころ」

1920年11月に明治神宮が生まれた。その時の「鎮座祭」は今では考えられないほどの大盛況であり、なおかつ「奉祝飛行デー」と称して国産飛行機が舞うほどだった。国産飛行機もまだ生まれたばかりであり、世界自体が「空」に対して憧れを抱いていた頃に重なる。その空を巡っては飛行士など空の関係者が国内外問わずに参拝した。

第二章「独立運動の志士は祈った──革命家たち」

時代は第一次世界大戦、日中戦争、そして大東亜戦争へと迎える。その時代の中で、アジア周辺諸国は、欧米諸国にて植民地化されている国もいくつか存在しており、その中には革命や独立をうたう志士たちもいた。志士たちの中には頭山満らの支援を受けた人も少なくない(孫文蒋介石ラース・ビハーリー・ボースなど)。その革命家たちも明治神宮を参拝し、東条英機が首相時代に行われた大東亜会議の首脳たちも参拝している。

第三章「スポーツの戦後と外苑の行方──占領者たち」

大東亜戦争における東京大空襲により、明治神宮は消失した。しかしその空襲の最中、明治天皇と昭憲皇太后の御霊代を神職らの尽力によって守り抜いた。やがて戦争は終わり、GHQらの進駐なども相まって参拝客も激減、さらには消失した社殿の再建などの課題もあった。また宗教法人としての再スタートも切られた。

神宮外苑では戦前からもレクリエーション施設があり「明治神宮外苑競技場(現:国立競技場)」や「明治神宮球場」などが存在したが、それらの施設にてアメリカンフットボールや野球の振興も行われた。

第四章「絵画館にみる美術と戦争──続・占領者たち」

同じく神宮外苑には「聖徳記念絵画館」や「明治記念館」がある。後者は主に結婚式場にて扱われるケースが多いが、前者は主に美術作品の展示が多くある。展示されている中には日清・日露・大東亜と戦争にまつわるものも多くある。

第五章「祖国への眼差し──日系移民たち」

日本を離れ、海外の地にて戦後復興を支えた「日系移民」も少なくない。日系移民も祖国日本をどのように見て、さらに日本にやって来て参拝を押してきたのだが、参拝以外にも明治神宮のために会を結成し、そこで集められた資金を明治神宮再建に役立てられた。

第六章「参拝の向こう側──大統領たち」

先にも書いたように明治神宮は日本人に限らず、海外要人も多く参拝している。大統領はもちろんのこと、サルトルシモーヌ・ド・ボーヴォワール夫妻などが名を連ねている。

100年という月日は他の神社と比べると短いように見えるかも知れないが、東京という中心地であり、なおかつ戦禍にもさらされた。また国内外の事情などにもさらされて現在の神宮として存在する。その激動の歴史は内にも外にも存在していることがよくわかる。

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