富岳 世界4冠スパコンが日本を救う

「2位じゃだめなんでしょうか?」

これは2009年に当時の民主党が政権を奪取し、国家予算の見直しを行うための事業仕分けを行う際に、スーパーコンピュータの開発予算の削減を決定し、その中で予算の妥当性を研究者に質問したときに出た言葉である。この発言により各メディアから猛バッシングを受け、さらにはノーベル賞などの受賞を果たした科学者らからも批判を受けるようになった。

あの発言からもう13年の月日が流れようとしている。今となっては本書のタイトルのように富岳が世界4冠と世界一のスーパーコンピュータとなり、コロナ対策など様々なシミュレーションを行うのに役立てられている。あの発言からどのようにして世界一のスーパーコンピュータを作り得たのか、その経緯を取り上げている。

第1章「コロナ禍の「秘密兵器」、富岳登場」

特に今回のコロナ禍えはこの「富岳」を利用したシミュレーションが大いに役立てられている。特に飛沫感染のシミュレーションや外気対策、さらにはフェイスシールド開発など、様々な場で使われている。

第2章「「2位じゃだめなんでしょうか」が残したもの」

冒頭にあった発言の時以前からスーパーコンピュータの開発を行ってきたのだが、その予算削減にあたり、研究者たちが反発をした。その際に冒頭の質問があったのだが、研究者たちは説明できなかった。それが発奮材料となり、「京」の開発にこぎ着け、2011年に世界一のスーパーコンピュータの地位を獲得した。

第3章「富岳、世界初「スパコン4冠」への軌跡」

やがて「京」も他国のスーパーコンピュータの開発の波にのまれ、世界一の座から陥落した。そこで後継となるスーパーコンピュータとして「富岳」の開発がスタートした2014年の話である。その富岳を開発に当たってのプロセスを取り上げている。

第4章「省電力スパコンで世界一、ベンチャー2社の明暗」

スーパーコンピュータの開発は何も富岳といった高性能のものばかりではない。スーパーコンピュータの中でも電力を抑えたものもいくつか開発を行っており、その部門でも「Shoubu(菖蒲)」のように世界一を獲得しているものもある。その開発の背景と、会社の明暗を取り上げている。

第5章「量子コンピューターの衝撃」

量子コンピューターは元々1980年代に概念的に作られたものであるが、実際の開発までには至っていなかった。実際にそれを行うためのハードウェアがなかったからだ。2000年代に入りようやくハードウェアを含めた開発を行き、2011年には初めて量子コンピューターの建造にも成功した。そこからさらに進化し2019年には「Sycamore(シカモア)」が量子超越性を実証することに成功したというニュースもあった。日本でも開発は進んでいるのだが、それでも他国と比べると遅れをとっている状況にある。

私たちの生活の中で密接しているようで、なかなかお目にかかれないスーパーコンピュータ。その開発は国の威信も側面としてはある。技術的な進化にてリードしているかどうかと言うものもあれば、処理速度や省エネなどの度合いと、さらにはより細かい側面でのシミュレーションなど予測を行い、対策を行っていく上で必要なツールにもなっている。

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