本書は労働にまつわる歴史のなかでも「アルバイト」にフォーカスを行っている。元々この「アルバイト」の語源はドイツ語における「労働」や「仕事」を「Arbeit」と綴られていたことから来ている。いわゆる年や月単位における期間限定の雇用形態を表している。
本来であれば非正規雇用の一種であるが、中には期限を設けない正規雇用と同じような定義を持つアルバイトも存在しており、なおかつ派遣社員や契約社員、パートタイムなど形態も多岐にわたるため、曖昧になっていると言わざるを得ない。
そもそもなぜ「アルバイト」ができたのか、そしてアルバイトに対する考え方はどのように変化していったのか、本書はそのことを論じている。
第一章「なぜ学生アルバイトの歴史を論じるのか」
「アルバイト」の歴史を紐解くのは労働史といった労働に対する考え方の歴史を考察するにしても、「アルバイト」だけに当てたものは今まで出会ったことがない。そう言う意味では本書は斬新さを持っている。その意味合いとどのように考察をしていくかの概要を本章にて取り上げている。
第二章「「アルバイト時代」の登場」
そもそも「アルバイト」はいつ頃から使われ始めたのか。書物がないため定かではないのだが、少なくとも大東亜戦争後からもうすでに使われていた。しかし当時は一般的に使われているよりは期間限定で働く「隠語」として使われていた。
第三章「終戦直後のアルバイト事情」
戦後間もない時の「アルバイト」は主に「学生アルバイト」と呼ばれるような状況で、大学の勉強の傍らで、生活費を稼ぐために期間・時間限定で働くといった動きを表していた。職種も販売もあれば、今では法に触れるような仕事まであった。また講義などを受けた後の夜に働くアルバイトもあり、通称「夜バイト」とも呼ばれた時もあった。
第四章「小遣い稼ぎのためのアルバイトへ」
1950年代になってくると、アルバイトのあり方も変わり始め、生活費を稼ぐだけではなく、遊びなどの「小遣い稼ぎ」のためにアルバイトを行う人も出てきた。また興味深いのは親の仕送りとの兼ね合いによって、アルバイトを行っているかどうかの相関関係も取り上げている。
小遣い稼ぎのためのアルバイトの人もでてきたとは言え、大多数は生活費の補填のために行う人が多かったが、それがだんだんと変わり始め、学生の多くがアルバイトを行うようになってからは小遣い稼ぎ・生活費の補填の両方の意味が込められるようになった。
第五章「アルバイトの大衆化・日常化と職種の転換」
やがて、アルバイト自体が学生だけの者に限らなくなって来るようになった。それは「フリーター(フリーアルバイター)」の誕生にある。他にも大学自体への進学率も上昇し始め、「大学」に通うこと自体が当たり前のものになりつつあることも一因としてあった。またアルバイトの専門情報誌も出てき始め、生活費を稼ぐためにアルバイトを行うのではなく、むしろ楽しみのために、小遣い稼ぎのため積極的にアルバイトを行う方々も増えてきたことも要因となり、「アルバイト」が日常に浸透してきた。
第六章「バブル経済崩壊後におけるアルバイト」
バブル崩壊になってくると、経済的な事由も含めますますアルバイトを行う人が増えてきた。またこの時期になってくると、ここ最近でも話題となっている「ブラックバイト」なるものも生まれ、学生たちが苦しめられるケースも出てきた。
第七章「学生アルバイトの現代的課題」
学生にとってアルバイトとは何か。その定義は時代とともに変化していることは言うまでもない事実である。どのように変化をしており、なおかつ「課題」としてどのようなものがあるのかを提示している。
本書にも記しているように、歴史的な背景としては「アルバイト」は学生が生活費、または小遣い稼ぎのために、時間・期間を限定して行うものであった。しかしながらここ最近では幅広い年代にてアルバイトを行うようになり、決して学生だけのものとは言えなくなった。なぜそうなったのかと言う所が知りたかったのだが、歴史的に見ても、これこそ「曖昧」と言うほかない。
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