日用品や食品をスーパーに限らず、色々な所で購入するのだが、ここ最近「コオロギチップス」や「コオロギせんべい」なるものが売られているのを目にする。実際に購入したことはないのだが、機会があれば購入しようかと考えている。
関係ないように見えるが本書はそのコオロギこそ、日本のみならず、世界の食糧問題の救世主になり得るのだという。その要因として本書にて言及している。
第1章「人類の課題:環境悪化と食料不足」
環境問題が長らく叫ばれているのだが、その本質として「水」と「食糧」の問題が挙げられる。ここ最近では少し要因が異なるのだが、海外からの輸入が滞っていることにより、食糧の値上げや販売ストップといった動きを見せている。
その救世主としてコオロギなど「昆虫食」がある。「昆虫食」というとかつて「昆虫食古今東西」や「「食べること」の進化史 培養肉・昆虫食・3Dフードプリンタ」でも取り上げているように、日本でもイナゴや蜂の子などが有名である。特に前者は、大量発生が原因となって農作物への悪影響が強く、飢饉に陥ることも少なくない。それを逆に利用することにより、栄養食として扱うことができるという。そこでコオロギがなぜ食用に向いているのかを解説している。
第2章「コオロギフードは徳島大学から」
コオロギフードは元々徳島大学における研究からきた産物である。コオロギをいかにして食用に転じられるのかを研究し、大学発のベンチャー企業を設立して、コオロギせんべいを製作、販売にまで発展した。
第3章「コオロギによる循環型タンパク質生産システムの構築」
コオロギを食用にすると、逆にコオロギが絶滅の危機に瀕してしまうのではないかと邪推してしまう。しかしながらコオロギを利用して、循環型の生産サイクルを生み出すことにより、コオロギの生産はもちろんのこと、他の農作物にも良い影響を及ぼすシステムとなる事を本章にて主張している。
第4章「日本のコオロギフードビジネスの展開」
せんべいやチップスばかりでなく、コオロギパウダーが生産され、様々な面でコオロギを使うようになった。例えばラーメンやパンなどにも展開されるようになった。しかもそれらの食べものは「日経トレンディ」などの情報誌にも取り上げられ、話題をさらった。
第5章「世界のコオロギフードビジネス」
実はコオロギフードは日本に限ったことではなく、日本で研究される以前にフィンランドでも研究され、世に出るようになった。それがヨーロッパにも広がりを見せ、昆虫食マーケットにまで発展した。
第6章「コオロギがワクチンや医薬品になる」
本章は少し衝撃的だった。というのは、ここ最近ではワクチンや飲み薬の開発についてかなり話題となっているだけに、それらの開発においてコオロギも役立つのではないか、という研究・開発まで行われているという。もちろんまだ研究段階になるため実用化されるかどうかも不明だが、もしコオロギがワクチンや医薬品になることもあると言う希望を持てる。
第7章「コオロギフードの可能性―良品計画の金井政明会長との対談」
本章ではコオロギフードがどのような可能性を秘めているのか、実際に無印良品にて「コオロギせんべい」を販売している良品計画の会長と著者との対談を収録している。
本書はあくまでコオロギに限定した可能性を紹介しているのだが、他の昆虫もまた食用に転じることができ、なおかつ様々な食糧の希望にまでなる。中には害虫や外来種とまで呼ばれたものも使いようによっては肥料や食用になることができる可能性も秘めている。食糧難が進行し始めている中で、これからの「食」としてコオロギをはじめとした昆虫はこれからの大黒柱となり得るのかも知れない。
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