「コロナ禍」は様々な所で起こっている。飲食業界や旅行業界などがメディアにて注目されるのだが、冠婚葬祭の業界もまたコロナ禍のあおりを受けてキャンセルが続出し、キャンセル料を巡る裁判まで起こっているという。
もちろんコロナ禍により結婚が少なくなったというのは短絡過ぎである。結婚はするのだが、結婚式は挙げず、結婚報告だけにとどめる所も出てきている。その一方でコロナ対策を十分に行って結婚式を挙げる所もあり、結婚するカップルそれぞれの事情がある。その結婚式にてあるのが「仲人」といった存在である。本書は「仲人」とはどのような存在なのか、文化的な観点から取り上げている。
第1章「仲人をめぐる「民俗」――村落共同体のなかの結婚」
そもそも「仲人」とはどのような存在なのか。調べてみると、
人と人との間に立って,橋渡しをすること。また,その人。特に男女の仲をとりもって,結婚の仲立ちを務める人。媒酌人。「大辞林 第四版」より
とある。こう見てみると愛のキューピットといった存在のように見える。しかし「仲人」は愛のキューピットとは違い、封建社会において結婚は「形式的」なものだったことがある。よくある貴族階級の結婚でも、別の名家や王家と婚姻を結び、国交を深める明石とするが如く、日本でも武家や公家、華族といった階級の高い所が「家」と「家」とを結びつけて深めるといったものがある。そう言う意味で「仲人」が重要になってくる。また本章では「仲人」について上流階級のみならず、村落における共同体との結びつきを深めるという意味合いも持っている。
第2章「文明化と仲人――明治・大正期における「家」の結婚」
とはいえ近代に入る明治時代までは仲人についてそれぞれの決まりなどを協議の上で行っていくものだったため、広義にて明文化されていなかった。その「仲人」について「媒酌結婚」として規範にしていったのが明治に入ってからのことである。この明治時代における規範化を「文明化」としているが、この時代「文明開化」により、海外の文化を取り入れて近代化するといった風潮にあった。「仲人」を一つの「文明」として規範する風潮を挙げているのだが、それがなぜなのかを本章にて取り上げている。
第3章「仲人と戦争――結婚相談所にみる結婚の国家的統制」
今でも手を替え品を替え続いている「結婚相談所」もあれば、婚活サイトや婚活パーティーといったものも存在する。「結婚相談所」の歴史を本章にて取り上げているが、結婚相談所の概念自体は明治時代から存在しており、「結婚媒介業」「結婚相談業」としてあり、商売として成り立っていたという。
第4章「仲人の戦後史」
とはいえ「イエ」と呼ばれる制度が強い日本の中で結婚相談所における結婚はなじむかというと、お見合いからの結婚としてなじむようになっていった。そして戦後になると、様々な「自由」が許されるようになり、結婚相談所やお見合いなどを介さない恋愛結婚も出てきた。様々な場所に置いてけっこんの仲立ちや第1章で取り上げたキューピット役などが出てきて、仲人自体も多様な存在になってきた。
ただここ最近では仲人を介さずに結婚する人も多い。特に婚活サイトなどを通して結婚するといった所も出てきており、出会いの場も多様化している。仲人は結婚相談所を含めて存在し続けるのだが、多様化して行く中で仲人のあり方も変化していく、その歴史を知ることのできる一冊と言える。
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