ぜにざむらい

本書は戦国時代、江戸時代にて活躍した武士、岡左内(おか さない・岡定俊の通称)を描いている。岡の逸話として利殖の巧さにより、多くの金銭を抱えていたことで知られており、その銭を戦の際に持ち歩く、あるいは多くの銭を敷き詰めて昼寝すると言ったことを愉しみとしていたという。本書の表紙にもその片鱗を見せている。

そう考えると守銭奴のようにも見えるのだが、会津征伐の際は当時の主君である上杉氏に銭を献上、同僚の武士へは貸し与えたという。

その一方で戦には強くあり、転々としたものの、主君への信頼も厚かった。そう言う意味では銭にも主君にも「献身的」といった側面があるのだが、その「献身」がどうも面白おかしく描かれている一冊である。ある種飄々としているようでいて、利殖に余念が無く、その傍らで戦に勝つといった面が強く表れている。そう言う意味で「痛快」とも言える人物像が浮かび上がった一冊である。