食虫植物の文化誌

「食虫植物」は珍しいようでいて、なかなかお目にかかれない。しかし国内外問わず、類があり、美しい食虫植物も存在する。その一方で、映画や小説などでは「人喰い植物」の題材として扱われることもしばしばある。

そもそも食虫植物はどうして存在してきたのか、またどのような進化を遂げ、なおかつどのように捕食を行っているのか、本書はめくるめく食虫植物の世界を取り上げている。

第1章「食虫植物とは」

「食虫植物」は、

昆虫その他の小虫を捕獲消化して栄養の一部とする植物。葉に多くの粘液を分泌する腺毛を持つモウセンゴケ・イシモチソウ・ムシトリスミレの類、また、葉の一部が袋状となり、その中に落ち込んだ虫を消化する液を分泌するウツボカズラ・サラセニアなどがある。光合成を行う能力もある。食肉植物。「広辞苑 第七版」より

とある。辞書にもあるように特に有名なのがウツボカヅラやサラセニアであるが、日本ではウツボカヅラがイメージされる。本章ではそれだけでなく、様々な食虫植物を取り上げている。

第2章「食虫植物と他の生物との相互関係」

食虫植物や動物、さらには他の植物たちとの「相互関係」がなり立っている。もちろん自然界にいるため、食虫植物の天敵もいれば、食虫植物が天敵となっている動植物もいる。他にも食物連鎖や互助といった役割を担っているところもあり、関係はなかなか複雑である。

第3章「驚くべき発見」

食虫植物の発見自体は驚きを持って受け入れられたほどである。それは通常であれば動物や他の植物には攻撃してこないことが固定観念としてあったが、それが覆されたこと、さらには光合成も行うものの、栄養は他でも摂っていること、また形状も他の植物と異なる事が多くあったことも挙げられる。

第4章「人食い植物の攻撃」

言うまでも無いが「人喰い植物」は地球上には存在しない。しかしながら食虫植物が狂暴化して人喰い植物になるといったことに着想し、多くの小説や映画、マンガなどで架空の「人喰い植物」が次々と生まれた。日本で最も有名な架空の人喰い植物となるとマリオシリーズに出てくる「パックンフラワー」であろう。

第5章「食虫植物のさまざまな用途」

食虫植物は様々な用途で使われる。美術作品のモチーフになれば、観葉植物として扱われることもあり、国・地域によっては料理にも使われている。

第6章「食虫植物の採集・栽培・保護」

食虫植物は園芸店にもよるのだが、比較的手に入れるのは容易である。場所によっては食虫植物の専門店までできているほどである。そこで購入するケースもあれば、採集して、栽培するケースもある。しかし他の植物と異なるのが、その育て方と保護の仕方が異なる所にある。その注意点も本章にて言及している。

本書には多くの食虫植物の写真が扱われている。よく見る食虫植物はもちろんのこと、海外でしか存在しておらず、日本でも掲載されるのが珍しい種類まである。ありとあらゆる「食虫植物」の種類は、それに因む文化がよくわかる一冊と言える。