向島・箱屋の新吉 梅若の涙雨

本書は「向島・箱屋の新吉」シリーズの第3弾となる作品である。本書の舞台は現在の墨田区堤通にある「木母寺(もくぼじ)」。その創建のきっかけとなる梅若丸を弔ってつくった「梅若塚」がある。

新吉はいつもの箱屋の仕事で移動をしている最中、梅若塚を通っている最中に女が涙している姿を目にした。その女に涙の理由を聞くと、女衒(ぜげん・江戸時代に、女を遊女に売ることを業とした人のこと)に売った娘の行方を捜しているというもの。新吉らも協力して捜すと、見つかったのはまた「事件」だった。それと同時に主人公である新吉の知られざる過去も知ることとなる。

「箱屋の新吉」シリーズは時代物であり、ミステリーの要素はあるのだが、今回の「ミステリー」は主人公自身の部分が大きかった。というのは新吉の過去自体がシリーズの中でほとんど語られていなかったこと、さらにはその「過去」の衝撃が私自身が想定以上だったためである。

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