風俗嬢の見えない孤立

「風俗嬢」と呼ばれる世界があるが、その世界の中はあまり知られていないことが多い。知られているとしても、現状を本書をはじめとした書籍、もしくはドキュメンタリー番組にて知るくらいである。

風俗嬢の世界はわたしたちの知られざるヤバさと「孤立」が存在しているのだが、一体どのような現状があり、なおかつどのように変わっていく必要があるのか、そのことについて取り上げている。

第1章「「風俗ヤバい」を捨てられない社会」

風俗の世界で働いている人びとの多くは、他人にその仕事をしていることを言えない。本書の最初に様々なアンケートやデータが出ているのだが、風俗で働いている女性に公表できるのかを聞くと、半数以上が「誰にも知られたくない」という結果だった。

にもかかわらず、なぜ「捨てられない」のか、そこには仕事・金銭など様々な事情でもって働く現状もある。

第2章「「夜の世界の俯瞰図」をつくる」

風俗の世界ではよく「夜の世界」とも言われている。かつては「赤線」とも言われていた。市場規模は思っている以上に大きく5兆円以上にも上るのだという。しかし「風俗」と言っても「デリヘル」「ソープランド」など多岐にわたり、分類もある。

第3章「「困っている風俗嬢」はどこにいるのか」

そもそも風俗で働く女性、いわゆる「風俗嬢」の現状とはどのようなものかを本章にて取り上げている。「風俗嬢=苦しい」、あるいは「風俗嬢=困っている」といったイメージが持たれるが、はたしてそうなのか、著者自身の取材をもとに取り上げているが、実は「困っている」にも分類があった。

第4章「風俗嬢の「セカンドキャリア」」

では風俗嬢たちが、仕事を辞めて、次の人生はどのように送っていくか。風俗の世界から完全に引退をするかあるいはまた違う風俗で働くのか、それぞれである。しかしながら風俗の世界に入る部分においてある種の「年齢制限」がある。実際に条件に「●歳まで」と設けるところもあるのだが、実際はニーズの部分において見えない「壁」があり、それを利用しているところが多い。

第5章「「同情」するなら「ビジネス」する」

風俗嬢になる経緯は様々であり、必ずしもよくドラマ・マンガなどであるネガティブな理由ばかりとは限らない。そういったイメージが強いためか、周囲からある種の「同情」を持たれることも少なくない。著者曰く「同情」は長続きしないという。どちらかというと「ビジネス」の関係を持つことによって成り立つという。

第6章「風俗は「セーフティネット」なのか」

よく風俗の所で言われている中に「セーフティネット」をとらえている主張もある。困窮した女性の「最後の砦」と主張しているメディアもあるのだが、著者はそれに違和感を持っているという。積極的に風俗に関わりたいと言う人もいれば、先の主張通り、困窮して仕方なく入ったという人もいる。第3章の主張と重ねている部分もあるが、必ずしも「セーフティネット」とは言えない。

第7章「「孤立」の要因を取り除くために」

著者は風俗の世界を取材していく中で、ある使命がある。それは風俗に関して「孤立」するような要因を取り除き、印象を変えていきたいというものである。また風俗に対して、あるいは風俗で働いている女性に対しての視線も変えていきたいという思いがある。

「風俗」に対しての考え方はもちろん変わる人もいれば、ステレオタイプの概念しか持っていない人もいる。もちろん風俗および風俗嬢に対しての考え方を変えるのは人それぞれであり、なかなか難しい部分にあるのだが、それを変えるきっかけはどこにでもある。本書もその一つと言えよう。

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