悪い夏

本書は生活保護の受給者、そしてその方々の経済自立を図るためのケースワーカーの物語である。もちろんその生活保護の受給者の中には「不正受給」を行っている人も少なくなく、本書ではその中でもタチの悪いような人ばかりである。

しかも「人の縁」はその人自身を変わらせてしまうと言うが如く、ケースワーカー自身も生活保護に陥ってしまう。ごく普通の人間が悪い人間に触れていくことで染まってしまうかのように。

そういった意味のミステリーだが、何とも生活保護も含めた社会の「闇」をえぐり出している一冊としか言いようがない。本書はフィクションではあるものの、一部本当にありそうに思えるものもあるため、ノンフィクションとも錯覚してしまうような感覚にもなった。著者が緻密に取材をしたのかどうかは不明だが、克明な描写しており、取材・執筆を通して著者自身が悪い部分に染まってしまうのが心配するくらいのものだった。