地方メディアの逆襲

メディアというと全国的に展開しているメディアはもちろんのこと、地域で発信している地方メディアがある。前者がよくメディアとして扱われるのだが、地方メディアも地方独自の視点から発信していることも多くある。

では地方メディアはどのような「視点」でもって調査・発信を行っているのか、そのことについて取り上げているのが本書である。

第1章「秋田魁新報 イージス・アショア計画に迫る」

言うまでも無く秋田を中心に展開している新聞である「秋田魁新報(あきたさきがけしんぽう)」。中でも本章で取り上げているのが2020年に計画が撤回することとなった「イージス・アショア計画」である。この計画における防衛省の杜撰さを対象となった秋田の演習場周辺を綿密に取材し、スクープとして取り上げられた。

第2章「琉球新報 ファクトチェック報道の舞台裏」

地方の中ではけっこう有名な琉球新報。もちろん沖縄の基地問題に関しての話が中心である。本章では沖縄の視点と本州の視点の違いを明確にした取材を取り上げている。

第3章「毎日放送 ドキュメンタリー『映像』の系譜」

第1章・第2章は新聞だが、本章・次章はテレビメディアである。特に在京キー局が中心となっているのだが、地方局や本章で取り上げるような在阪局も独自の色を出して奮戦をしている。本章では毎日放送のドキュメンタリー番組について取り上げている。

第4章「瀬戸内海放送 ある調査報道記者の歩み」

瀬戸内海放送では香川県で施行された「ネット・ゲーム依存症対策条例(通称:ゲーム条例)」のパブリックコメントに関しての調査報道を取り上げている。また「高知白バイ」において司法に対する「疑惑」も挙げている。

第5章「京都新聞 被害者報道を考える」

今も記憶に残る2019年7月に起こった「京都アニメーション放火殺人事件」である。このときの報道はまさに「過熱報道」の様相にもなり、さらには被害者の方々に対しての「実名」「匿名」報道について議論が高まっていった。京都新聞は被害者報道とは何かなど考えさせられることが多かったという。新聞社の立場からこの事件にたいしての教訓を振り返っている。

第6章「東海テレビ放送 『さよならテレビ』が問うもの」

テレビに未来があるのか、と言う質問に「ない」と答える人も少なからずいる。その疑問を投げかけたのが東海テレビで放送した「さよならテレビ」という自社を舞台にしたドキュメンタリー放送である。テレビ業界の現状をありのままに映し出され、メディア業界にて議論が巻き起こった。

地方メディアも奮戦していることはよくわかるのだが、それ以上に「メディアとは何か?」と言うことを考えさせられる。今も新型コロナウイルスやウクライナ侵攻が取り上げられているのだが、果たして報道はどうあるべきか、それは報道する側、その報道を視聴する側双方とも考えるべき課題と言える。