住みたいまちランキングの罠

よくランキングにて「住みたいまち」や「住みたい都市」、あるいは「住みたい地域」「住みやすい地域」といったランキングや●選と言ったものが存在する。引っ越し先の参考に扱う人もいれば、「何を言っている、住めば都じゃないか」と思う人もいる。しかし何を基準にしてランキングにしているのか、参考資料を出している所もあれば、それすらなく書き手の独断と偏見で書かれているケースも多々ある。

本書はよくネットメディアなどでも取り上げられる「住みたいまちランキング」の功罪を暴いている。

第一章「「子育てしやすい」をアピールするまちのウソホント――認可保育所や小児医医療費助成制度が整ったまちの不都合な真実」

「子育てしやすい」街のランキングも良く出てくる。主に子供の抱える世帯にとって、子育ての環境の良さを基準にしているのだが、実際に保育施設としても料金が高かったり、入ることができるかどうか微妙な所もあり、そこが「不都合な真実」として取り上げている。

第二章「「子育てしやすい」環境とは何か――子育てに向く立地の視点から」

「子育てしやすい」は何も保育施設に限らず、学校や給食、さらには働く場所への利便性なども求められる。また公園などの憩いの場もまた「子育て」に絡む。様々な視点でもってどこが「ベスト」で、どこが「ベター」なのかについて考察を行っている。

第三章「安全・安心なまちの裏事情」

「安心」「安全」と言う言葉が至る所で出てきている。しかし何をもって「安全」「安心」を担保していくのかは、それぞれの事情による。犯罪にしても、病院にしても、消防にしても、老人ホームにしても、料金にしても、様々な面で「安心」できる尺度はことなるため、メディアによる「安心」「安全」ほど信用できない。

第四章「便利なまちにも落とし穴がある」

まちとして紹介される中で「便利」もまたその一つとして挙げられる。しかし「便利」というのも何をもって「便利」とするのかも分かれてくる。図書館などのハコモノの充実か、ゴミ出しが充実しているのか、交通経路が充実しているのかなどもある。

第五章「迷惑施設のあるまちは、意外に住みやすい?」

「迷惑施設」は工場や公営競技施設などを本章にて挙げている。しかしそのような施設があるからといってイメージダウンにつながるかというと実はそうではないという。

第六章「イメージのよい、住みたいまちは本当に暮らしやすいか?」

イメージもまた人それぞれである。世間としてイメージの良いまちでも実際に住んでみると、交通や買い物の面で面倒になるケースもある。「住みたいまち」として代表する所でさえも、細かい場所によっては住みにくいところとも言える。

第七章「マンション購入を煽る「常識」に騙されるな」

よく私の所にもマンション購入に関してのチラシが配られる。実際には読まずに捨てるのだが。マンション購入のチラシやHPの中には色々な数字が出てきて、しかも購入すると良いメリットが羅列しているのだが、その羅列に「罠」があるという。

第八章「まちの魅力向上と、あるべき住民負担について考える」

まちの魅力は感じる人それぞれにある。特に本章では横須賀線など多数の路線が停車し、なおかつタワーマンションも多くある川崎市中原区の武蔵小杉とその周辺を引き合いに出しながら、魅力と住民負担の要素について考察を行っている。

よく「住めば都」と言う言葉がある。実際に周囲の評価では住みにくいという言葉を聞いて、実際に住んでみると案外住みやすく、面白い所があるとポジティブにとらえることもあれば、その逆として良い所と聞くも、実際には住みにくいという印象を持つところもある。「住みやすさ」は人それぞれであり、特に新生活で色々な場所に転居される方も多いのだが、ネットなどのメディアの評価に惑わされず、自分自身で見ながら選ぶと良い。自身で見ているものが「住みやすい」かどうかがわかってくるのだから。