赤い髪の女

親子の「縁」は切って切れないものである。切っても切れないのだが、片方の裏切りにより、その縁が切れかけることもあれば、完全に「切れた状態」になることもある。しかし何かしらの影響で元の鞘に収まるといったこともある。

本書は父に捨てられた子が、金を稼ぐために働く。その時にある赤い髪の女と出会う。その女に子供は恋に落ちた。それが悲劇に墜ちることも知らずに。

女性と子供、そして父と子。それらの数奇な運命は悲劇でもって帰ってくる。しかしその悲劇の中には人間としての「善」の部分が見え隠れしていた。

本書の舞台はトルコ。もちろんトルコならではの情景や事情などもあるのだが、親子の関係や男女の関係など、国民性は違えど共通している部分も少なくない。そして本書にある関係にまつわる葛藤もまた遠く離れた日本でもあるかもしえれない。そう思った一冊であった。