櫓太鼓がきこえる

今年の相撲はまさに新しい風が入ってきたと言うほかない。1月の初場所は御嶽海が3度目の優勝を飾り、大関昇進を飾った。3月に行われた春場所では御嶽海の大学時代の後輩にあたる若隆景が初優勝を果たした。次の夏場所ではどのような風が吹くかが期待される。

相撲界における「新しい風」は何も力士ばかりではない。本書で紹介する「呼出」もまた同じように新しい風が入ってくる。その新しい風は高校を中退して、叔父の薦めで相撲部屋に入ったとある少年だった。

志無く、ただ勧められて入ったのだが、相撲の世界にて裏方として入ってきて、力士たちの挑戦を見続け、そして彼らを呼び出す役割。もちろんその中には「しくじり」といった失敗はあるけれど、誰にも目立たないながらも輝こうともがき続ける姿があった。相撲の世界にもまた力士以外の支えがあるのは知っているが、呼出にフォーカスを当てたのは珍しい。