鬼同心と不滅の剣 牙貸し

江戸時代における身分の一つに同心がある。現代で言う所の警察官であるが、その中でも町の奉行所の中で見回りや軽い犯罪の取り締まりを行う役割を担っている。最近でも見かけることがあるのだが、地元の警官がパトカーや自転車、あるいは白バイ、徒歩でパトロールをする役割と考えれば良い。

前置きが長くなったが、本書は江戸の大伝馬塩町(おおでんましおちょう、現在の東京都中央区日本橋本町四丁目)の長屋で賊に襲撃される事件が起こった。その事件に逃れた一人の娘が八丁堀の同心に助けを求めるも、現場には不可解な状況になった。

その事件を解決すべく、娘は男装し名前も変え、同心の見習いを行う。本書の表紙全面にある美男がその娘である。そしてその後ろの侍の出で立ちが、八丁堀の同心。正確に言うと同心親子の息子であり、鬼瓦のような出で立ちでから「鬼同心」と呼ばれている。

同心の仕事をこなしながら、賊に襲われた中でいなくなった父を追うのだが、事件の中には厄介なものまであった。よくある江戸時代におけるミステリーと、家族、さらには同心にまつわる物語であるが、それぞれの人間模様の妙も愉しむことができる一冊である。