「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認

よくSNS上では「ぴえん」という言葉が使われることが多い。通常の「ぴえん」といった文字の他にも、その表情を映し出している顔文字もまたよく使われている。さらに調べて見ると、「ぴえん超えてぱおん」といった言葉も出てきており、2020年の上半期インスタ流行語大賞にもランクインされるほどである。

少し上の世代になると「何だこれは?」という印象を持たれるが、そもそもなぜ「ぴえん」ができたのか、また「ぴえん系女子」なるものもSNSを中心に出てきているという。本書はぴえんを基軸にしたSNS世代の消費や現在を取り上げている。

第一章「「ぴえん系女子」の誕生」

調べてみると「ぴえん」はインスタを含め様々なSNSにて使われている。その原点はアニメマンガであり、顔文字にもあるように泣き声のオノマトペとして使われていたものがSNSで使われ始め広がっていった。

やがて新宿・歌舞伎町を中心に、量産型女子や地雷系女子のことを総称して「ぴえん系女子」なるものも出てきている。ファッションなどにも特徴があり、本章ではその傾向を取り上げている。

第二章「「トー横キッズ」の闇」

昨年の秋あたりからニュースに出始めたのが「トー横」である。意味を知らないと「東急東横線」と連想してしまいがちになる。しかし本来は新宿TOHOビルの界隈の場所を「トー横」とよばれ、そこにたむろしている少年・少女が「トー横キッズ」と呼ばれるようになった。

しかしその「トー横」界隈も社会の「闇」を見せ始めるようになり、ネガティブな意味でニュースとして度々挙げられるようになった。

第三章「歌舞伎町「自殺」カルチャー」

日本各地には「自殺の名所」と呼ばれる所がいくつも存在する。中には都市部のところにも存在しており、本章で紹介する歌舞伎町のとあるビルもまた「自殺の名所」として挙げられている。本章では自らの体験談をもとになぜ自殺の名所となっているのか、そしてどのような人たちが自殺しているのか生々しく書かれている。

第四章「「推し活」と「男性性」の消費」

よくアニメやアイドルなどである「推し」は女性が男性に対して推しの人に貢ぐといった動きもある。しかも推しに対してどのように貢ぐだけでなく「自己犠牲」を伴うかという動きも「ぴえん系女子」にはあるという。

第五章「ホストに狂う「ぴえん」たち」

第四章で取り上げた「推し活」や「『男性性』の消費」の一つとして「ホスト通い」がある。「ホスト通い」にいそしむ女性は今も昔も存在するのだが、その「通う」人々にも変化があり、ぴえん系女子もホストクラブへ狂うほど通う傾向が出てきていると著者は分析を行っている。

第六章「「まなざし」と「SNS洗脳」」

特にSNS世代の傾向として「承認欲求」が強いことがある。その承認こそ他者からの「まなざし」にほかならない。また「承認」を得られる場として「SNS」が中心となるのだが、特にインスタ(Instagram)などで外見矯正に勤しむなど、ある種の「洗脳」もあると指摘している。

若者文化は世代と共に変化している。そもそもその文化のありかたが正しいかどうかは時代と共に検証していく。本書はいまある「ぴえん」とその文化と社会がどのようなものであり、なおかつ問題点はどこにあるのかをあぶり出している。「ぴえん」を使うに近しい世代だからでこそ見えてくるものがあるため、よくあるメディアよりも「ありのまま」がよくわかる一冊と言える。