悪徳の輪舞曲

弁護士の中には刑事事件の犯人の弁護を行う方々もいる。しかもその中には「悪魔の弁護士」や「悪魔の代理人」といった肩書きで、凶悪事件の被告人を弁護する人もいる。その弁護についてメディアが糾弾をするというケースもある。

しかし本書に出てくる弁護士は違う方向で「悪魔」というべきかも知れない。報酬のためなら、法律の範囲内で手段を選ばない弁護士である。しかしながら報酬の度合いによっては無罪を勝ち取ることができることで評判を呼んでいるという。

その弁護士が弁護に当たった殺人事件。しかしその事件の犯人、さらには弁護士、そして裁判の傍聴人と次々に「悪辣」な側面が映し出されている。しかしその「悪辣」な面が、犯人、被害者、そしてその家族の側面を見いだしている。悪辣な側面を垣間見てもなお、冷静で、かつ強欲に報酬を得る(「ふんだくる」と言った方が正しいか)ために動く弁護士の精神力がよっぽど悪辣に見えたのは私だけだろうか。