身分帳

元々本書は1990年に刊行され、1993年に文庫化された。初めて刊行されてから30年後の2020年に本書を原案とした「すばらしき世界」にて映画化されたものである。

そもそも「身分帳」は実際に存在しており、拘置所に入所した人(容疑者・被告人など)の態度や経歴などが記載されている書類のことを表している。問題を起こしたり、面会を行ったりと、事細かに記されている。しかしどれだけ細かく書かれるかは拘置所のある警察署次第となる。

さて本書の物語に入っていくが、ある男性が少年の頃からヤクザとなり、トラブルを起こし、人生の大半を刑務所で過ごすことになった。刑期を終え、身分帳を携えて出所したあと、自分自身の過去と、刑務所での経緯を振り返る。また自らも社会復帰を図っていくのだが、前科持ちで長らく刑務所にいたことから難航する。困難の中でこのままで良いのかを模索しながら思い悩む姿があった。戦前の時代であるため、現代と比べてもわからない部分はあるのだが、それ以上に人間としての「生きざま」とは何かを考える物語であったことは言うまでもない。