地球外生命-アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来

よくSF作品などで「宇宙人」や「地球外生命体」といったものが取り上げられる。もちろん現在の宇宙の研究においては、見つかっておらず、論者によっては存在しないと主張する人も少なくない。

しかし生命の跡は地球以外に存在するのかどうか。研究の中には火星にて生物の跡があるのかどうか調査を行った「バイキング計画」もあった。現時点で地球以外の場所で生物やそれらしき細胞は発見に至っていないが、まだ解明されていない場所・モノを考えると地球外生命体はわずかながらの確率ではあるもののいるのではないかという希望さえ持たれる。

そこで本書である。本書は「地球外生命」があるのかどうか、またどのようなイメージをもち、なおかつバイキング計画をはじめとした調査が行われてきたのかを取り上げている。

第1章「地球外生命観―古代ギリシャから今日まで」

もともと宇宙に関しての研究は古代ギリシャの時代からある種空想に近い部分で行われた。しかしながらその研究はキリスト教や国の思惑によって、新しい説を提示しようとすると死刑にさえなるような時代もあった(ガリレオ・ガリレイの「地動説」がそれに近い)。それから技術と共に研究も宗教・国の思惑から外れて進んでいき、アポロ計画などにより地球から宇宙へと有人・無人かかわらず飛び立ち、惑星の探査も行われるようにもなった。

第2章「生命の誕生は必然か偶然か」

古代ギリシャの時から「生物」に関しての定義、さらには歴史などが研究されるようになった。地球・宇宙の歴史も、研究が進んでいくうちに切り拓いていった。地球の誕生は約46億年前になったのも、研究の積み重ねからなし得ている。

ところが「生命」がいつ、どこで生まれたのかは、現時点でわかっていない。もっというと生物学に留まらず、宇宙や宗教、哲学など多岐にわたる分野での議論が必要である。

第3章「知的生命への進化―地球をモデルケケースとして」

では生物学的な観点から、地球における「知的生命」はどのように進化していったのか、細胞から植物、動物、そして人間へといかにして誕生したのか。また歴史のなかには恐竜もあったがどのように誕生し、絶滅への道を辿っていったのかを取り上げている。

第4章「火星生命探査」

冒頭にあった「バイキング計画」のあらましを取り上げている。簡単に言うと、

バイキング計画は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が1970年代に行った火星探査計画である。バイキング1号とバイキング2号の、2機の火星探査機が火星への着陸に成功した。Wikipediaより抜粋

とある。そもそもなぜバイキング計画がつくられ、火星の探索が行われたのか。生物は見つからなかったのだが、生命とおぼしき微生物など発見があったのかを取り上げている。

第5章「ウォーターワールドの生命」

空はとても暗かった。一方、地球は青みがかっていた

人類で初めて宇宙飛行を行った旧ソ連のユーリイ・ガガーリンが発した言葉である。それはルポルタージュ作者が着陸地点にてガガーリンから直接聞き、記事になったが、この記事が翻訳されるときになぜか「地球は青かった」と略され、現在に至っている。

「青み」こそが、海などの「水」などによって成り立っており、地球生物圏を「ウォーターワールド」とも定義づけている。

第6章「タイタン―生命概念の試金石」

実は生命概念のなかで有力な衛星が存在する。土星の第6衛星である「タイタン」である。「タイタン」は地球以外で唯一安定的な液体が存在したことが2005年にわかった。これは欧州宇宙機関(ESA)の小型惑星探査機であるホイヘンス・プローブがタイタンに着陸して、撮影などを通して確認された。そのタイタンにおける地表や生物がどのようなものだったのかを取り上げている。

第7章「太陽系を超えて」

生命探査を行った星はこの「タイタン」が最も遠い。もちろんタイタンより先の星の探査計画も各国にて進められており、ゆくゆくは太陽系を超えての探査も行われるだろうという動きもある。

第8章「生物の惑星間移動と惑星保護」

生物が惑星間を移動する議論は19世紀あたりから議論されており、実際に人類が地球から月へと渡ったというのもある。しかし本章ではそういった試みではなく、人類が宇宙飛行の計画を行う以前に、人類以外の生物が惑星間移動を行う事ができたのかの議論と、惑星移動を行う中での「保護」をどうすべきかを取り上げている。

第9章「地球外生命から考える人類のルーツと未来」

人類のルーツはどこにあるかと考えると、猿から辿り、進化を経て人類へと進化していった。しかしその猿の祖先を辿っていくと「生物」そのものの根源になってくる。その根源が地球外の所からやって来たのであれば、どうなるのか、その論考を行っているのが本章である。

宇宙の解明は進んで入っているものの、まだ謎が多く、惑星探査も有人・無人とで行われている。ただここ最近では無人探査がほとんどである。第6章でも言及したように、無人探査が行われた最も遠い惑星が土星の第6惑星「タイタン」であるが、それよりも遠く探査できるとしたら、いったいどのような「生命」が残っているのか、解明すればするほど宇宙の可能性が見えてくる。