1976に東京で

1976年はある種の「節目」である。もっとも昭和になってちょうど50年になったこと、民放とよばれるテレビ放送が開始してちょうど25年となったことなどが挙げられる。

時代は高度経済成長が踊り場となり、経済的に停滞している時代とも言える。その時代の中で就職を機に青森の津軽から東京へと渡り、出版社にて働くある人物がいた。経済が停滞してもなお、活気が沸いていた時代。しかし、その人は太宰治に憧れ、なおかつ何も始まっていないようなむなしさが溢れていた。

就職を機に、新しい人との出会いによって、その人はどのように変わり、どのような春夏秋冬を送っていったのか。本書はその日常を描いているのだが、今から数えること46年前の「日常」は今と明らかに異なるのは目に見えているものの、心情的な部分で「今も変わらない」所もちらほらあった様に思えてならなかった。