遠い声――管野須賀子

瀬戸内寂聴が昨年11月9日に逝去した。99歳という大往生である。作家として、そして人物としても、かなり大きな存在だった。特に作家としては俗名である「瀬戸内晴美」時代から長年にわたって活躍し、逝去する直前まで執筆を行っていたほどである。デビューしてからの前半は特に恋愛や不倫など、男女関係にまつわる小説が多かったのだが、出家し、現在の寂聴になってからは、恋愛もあれば伝記小説、さらには人生に関しての法話や対談などが中心となった。

伝記となると世阿弥を描いた「秘花」で有名であるが、今回紹介する管野須賀子(管野スガ)もその一つである。管野須賀子は明治時代に活躍した新聞記者、後に活動家となり、明治天皇暗殺計画を企てた幸徳事件により逮捕され、処刑された。その管野須賀子の生涯と、新聞記者から、政治活動家(特に社会主義運動)に傾倒したこと、さらに幸徳事件の首謀者の一人である幸徳秋水との関わりなどが描かれている。ちなみに本書は1975年に発表されたものが文庫化された一冊である。