戦神の裔

本書は平安時代末期における源平の戦いの一部を描いている。主人公は九郎義経、後の源義経である。その義経は幼少の頃に平氏により、家族と自由を奪われた身となる。奪われたことに憤りを覚えながらも兵を持っていなかったことによる無力感を覚えながら、次第に武蔵坊弁慶をはじめとした仲間をつくっていき、挙兵し、平氏を討つという物語である。

よくある義経となると伝説で語られる高潔なイメージが持たれるのだが、本書は少し我が侭な部分を持っている所に他の義経像とは異なる部分がある。

もちろん物語の流れは史実に沿っているところがあり、義経、さらにはその周りの部分の細かい所に「創作」の余地があるため、その細かい部分に、著者自身の持っている「源義経」観をふんだんに取り入れつつ、なおかつ劇的に仕上げてきているところに小説ならではのロマンといった面白味を引き出している一冊であった。