檸檬先生

本書にて題材となっている「共感覚(シナスタジア)」は、かねてから10万人に1人と言われているが、ここ最近の研究では「共感覚」のあり方が本書で取り上げる「色」はもちろんのこと、「擬人化」や「ニオイ」など多岐にわたっており、諸説あるが20数人に1人いるとまで言われている。

それはさておき、その共感覚を持つ小学生が、同じ共感覚を持つ中学生と出会うという物語である。本書の舞台は「共感覚」そのものがかなりレアなケースであることから、学校から蔑まれる対象となった。しかし同じ共感覚を持つ人と出会うことによって、彼女たちの生きる道はどのように進んでいくかという物語である。

著者は小学校の頃から物語を描きはじめ、18歳で本書を上梓した。「小説現代長編新人賞」の受賞作となり、専門作家になるかどうかは不明とどこかのインタビューで発言していたようだが、自ら持っている感覚や感触を物語にぶつける姿には感服させられる。これが小説としての「技術」をさらに持つようになるとどのような小説が生まれるのか楽しみと言える一冊であった。