アイヌのことを考えながら北海道を歩いてみた 失われたカムイ伝説とアイヌの歴史

私自身北海道の出身であるため、小学校の頃からアイヌのことについての勉強をしており、アイヌという言葉や文化を聞くと懐かしささえ感じられる。昨今では完結したマンガ「ゴールデンカムイ」が人気を呼んでおり、アイヌの人・文化に対する認知も広まっていったと実感もしている。もちろんアイヌに関しての議論は様々であるが、私としては良くも悪くもアイヌの文化について認知が広まったとポジティブに受け止めている。

アイヌとひとえに言っても、北海道の至る地域において独特の文化・場所がある。本書は北海道内におけるアイヌにまつわる場所を旅して回るという一冊である。

1.「小樽・余市・神威岬」

札幌から快速電車で行くと32分ほどで移動できる。そこから電車を乗り継いで余市にいくこともできる。その道程の中で、アイヌにまつわる場所を歩き、エピソードを綴っている。

2.「道南」

ちなみに著者は一気に北海道一周を行ったわけで無く、何回かに分けて北海道のありとあらゆる場所へ赴いている。本章では東京から新幹線など乗り継ぎ函館へと渡り、八雲町、松前町へと歩んでいる。

3.「札幌」

北海道の道庁所在地である札幌市だが、中心部は再開発が進んでおり、大都市ならではの街並みになりつつある。その札幌ではアイヌの名残はもちろんのこと、開拓の歴史を垣間見ることもできる。

4.「胆振」

地理的には函館と札幌の間にある所で、室蘭や登別などもある。本章ではその地域を取り上げているのだが、この地域における白老町にて「ウポポイ」と呼ばれる「民族共生象徴空間」であり、2020年7月12日に開園した。本章ではその場所についても赴き、言及している。

5.「道東」

道東というと「十勝」「釧路」「根室」と地域がある。本章ではそれぞれの地域、さらには湖や岬、街並みについて綴られている。特に阿寒湖はアイヌに関してのスポットがあり、深く掘り下げられている。

6.「旭川・稚内」

「道北」に位置する旭川と稚内における紀行を取り上げている。特に旭川については中心部のみならず、神居古潭や嵐山、オサラッペ川などアイヌに因んだ場所にも赴き、言及している。

7.「日高」

日高管内には、アイヌにまつわる印象的な「戦い」の場所がある。1669年にあった「シャクシャインの戦い」である。もともとその戦いの指導者であるシャクシャイン自身がシベチャリ(現在の新ひだか町静内地区)の首長だった。

8.「網走」

よくあるイメージとしては網走刑務所だが、現在もある。現在の刑務所はどちらかというと比較的再犯者で、それほど懲役が長くない犯罪者を収監しているが、かつては政治犯や重罪人が収監される刑務所で有名であり、戦後にはその刑務所を舞台にした映画も数多く出たことにより、「網走=刑務所」の構図ができあがった。本章では他にも網走にまつわるアイヌに関連したスポットを取り上げている。

元々北海道の地名はアイヌ語から来ているものがほとんどである。またアイヌにまつわる史跡はもちろんのこと、新しいスポットでもアイヌにまつわる場所は数多くある。本書はアイヌにまつわる一冊ではあるが、著者自身が「紀行文」を主としているため、それぞれの土地にまつわるエピソードのウエイトが多く、アイヌに関してはそれ程多くない印象だった。