猿神

本書の舞台はとある工場が舞台となっている。しかしその工場では「ブラック」という言葉を通り越しているほど過酷を極めた。心身共に疲弊する労働者たちだが、そこである暴行事件が起こり、犯人は逃走した。その事件の後に、奇妙な音が聞こえるようになった。動物の鳴き声なのか、それとも機会の音なのか。真相を追っていくうちにある工場の「謎」が浮かぶ。

本書は「猿」と銘打っているのだが、本書の舞台には猿は一切いない。また神に祀られている寺院や神社、ほこらなども存在しない。しかしなぜ「猿」なのか。それは物語の真相を追っていくうちにわかるのだが、その謎そのものを見えてくるうちに背筋が寒くなる感覚に陥る。

「ホラー」のジャンルであるのだが、そのジャンルに見合うような恐怖を与える一冊であり、なおかつ人間としてある「闇」も見事なまでに描かれていた。