人間の自由と物語の哲学―私たちは何者か

小説をはじめとした物語の中には登場人物がおり、周囲の人びとと織りなすことが多い。もちろん中には人間一人が出てきて、周囲の事象との関わりを描くケースもある。

もっとも登場人物たちにも、それぞれのアイデンティティがあり、なおかつ哲学があるのだが、本書は小説における登場人物を哲学的にどのよに捉えているのかについて考察を行っている。

第一部「哲学から小説へ―自由と主体をめぐる原理的探究」

小説において、登場人物の行動や関係によって、物語は動いていく。その行動をはじめ選択や思考、さらには正義や罪、脳のコントロールに至るまでの所を言及している。

第二部「小説から哲学へ―自由と主体を巡る解釈的・歴史的探究」

では逆に小説における作品にどのような「哲学」があるのか。登場人物における主体性はもちろんのこと、小説の世界と登場人物の「自己」との他対立、さらには人物それぞれの「自己」の変化などを取り上げている。

私自身、小説を読み、なおかつブログでも取り上げているのだが、小説を哲学的な観点で考察すると言ったことも無く、そういったことを行った本も見たことがない。そのため本書は小説、それも過去の名作を引き合いに出しつつ、そこにある「哲学」「自己」「物語」など様々な要素でもって、どのような「哲学」があるのかを取り上げている。そう言う意味では新しい「哲学」が生まれたのではないかとも考えられる。