その意図は見えなくて

物事には「視点」はもちろんのこと、当事者における「意図」が存在する。事により意図が無かったり、視点が少なかったり、逆に多かったりする。

本書は表題作を含めた5つの短編集であるが、その中に収録されている表題作は第42回小説推理新人賞受賞作である。その受賞作に恥じない推理作品だが、冒頭にあった「視点」「意図」の妙が推理の中にてふんだんに盛り込まれていた。高校を舞台にしており、高校生たちが推理の入り交じった群像劇だが、「視点」や「意図」をどのようにくみ取るのか、そして自身と他人の持っている「視点」や「意図」は何なのかといったものもあれば、それぞれある駆け引きもまた細かく描写されている。

他にも4編収録されているのだが、表題作に負けず劣らずの描写にて描かれている。ちなみに表題作が著者自身の作家デビュー作であるため、ミステリーなどの舞台で新しい風を起こしそうな気がしてならない。