その果てを知らず

著者の眉村卓氏はSF小説を長らく描き続けてきた。その眉村氏の最期の一冊と言えるのが本書である。60年以上前にあるサラリーマンが小説の道を歩み出し、SF小説を描き始めた。やがてサラリーマンを続けながら作家人生を歩んでいった中で彼は何を見いだしたのかを描いている。

もっとも本書は「自伝的小説」とも言えるものである。主人公や境遇こそは架空であるものの、著者自身も元々は大卒後サラリーマンとなり、その中でSF小説を描き始めた。やがて長編を上梓してから退職し、別の仕事に就いた後、専業作家となった。作家になってからは大学教授やペンクラブなどの要職に就く一方で、作品も次々と生み出し、2019年11月にこの世を去った。

SF的な展開も織り交ぜながら、著者自身の生涯を重ね合わせるような展開が次々とあるなど、著者自身の作家人生そのものを映し出した一冊に他ならなかった。