無国籍と複数国籍 あなたは「ナニジン」ですか?

先にも述べたように、日本では「国籍法」により、1つの国しか国籍を持つことができない。もし日本国籍を得ようとするのであれば、他の国の国籍を放棄する必要がある。しかし国内外に目を向けてみると「無国籍」の人もいれば、実際に他国の国籍をいくつか持っている「複数国籍」の人も現にいる。そもそも無国籍・複数国籍がなぜ存在するのだろうか、またその「国籍」を巡ってどのような問題が存在するのか。本書ではそのことについて取り上げている。

第1章「「国籍」ってなに?」

「国籍」は、

1.一定の国家の所属員たる資格。
2.航行機・船舶等の一定国家への所属。「広辞苑 第七版」より

とあるように、ある国家の一員、あるいは国民を表すためのものである。しかしながら、「日系○○人」や、日本生まれであるが、外国に国籍を持つ方もおり、中にはノーベル賞などの世界でも名誉ある賞を受賞する、あるいはスポーツなどで活躍すると、メディアでは「日本人」と呼ばれる。しかし正確には、国籍を中心とするならば日本人では無いのだが、なぜメディアでは日本人として取り上げるのか。また複数国籍と無国籍がなぜ存在するのか、その理由を取り上げている。

第2章「国々のはざまに生きる華僑華人」

一昨年に取り上げた「二重国籍と日本」でも言及したのだが、立憲民主党の蓮舫氏が2016年に当時の「民進党」の代表選挙の際に二重国籍問題が起こった経緯がある。蓮舫氏の場合は日本と台湾であるが、それに似た事例が政治家以外にもいくつかあり、その「いくつか」を本章にて列挙している。

第3章「生まれながらの複数国籍」

国籍を複数持つ人もおり、多くは「二重国籍」なのだが、中には三重国籍の人もいる。様々な国の国籍を持っているという良さもある一方で、複数国籍ならではの複雑な事情、さらにはリスクも背負っている。本章ではその実情を取り上げている。

第4章「国籍の剥奪」

国籍を剥奪される例もいくつか存在しており、先述の「国籍法」を違反したことにより、日本国籍を剥奪されたという例も存在する。本章では実際のケースを引き合いに出し、なぜ剥奪されたのか、そして剥奪された後の出来事のケースを4つ紹介している。

第5章「「無国籍ネットワーク」の発足、ドキュメンタリー番組」

多くの国・人がいる中で「無国籍」と呼ばれる人も少なくない。もっとも大昔にプロ野球選手にてヴィクトル・スタルヒンはロシア帝国出身で、日本で活躍したが、幼少にロシア革命により日本に亡命してから逝去するまで無国籍だった。

もちろん「無国籍」と言うと戦争や革命などの状態によって無国籍になり、難民となってしまう人も中に入る。その無国籍にまつわるドキュメンタリー番組のプロセスとネットワーク発足のあらましを明かしている。

第6章「身近な問題」

「国籍」は他人事のように見えて、実は身近な問題にある人も少なくない。日本で生まれ育ったものの、国籍が与えられず、国にまつわる面で苦労をする(パスポートが発行できないなど)もあれば、無国籍で有ながらもひたむきに生きる姿などを本章にて列挙している。

第7章「国家の矛盾」

国家にしても社会そのものが「矛盾」に満ちている。しかし国家としてのあり方はその矛盾をいかにして解いていくかも課題として挙げられる。その矛盾がどこにあるのか、そしてどのようにして解くべきなのかを提示している。

「国籍」は縁遠いように見えて、実は私たちの生活に密着している。昨今の日本では平和であれど、いつ戦争になるのかわからない。また国籍にまつわる問題がさらに発展する可能性もある。そのことを考えると、本書にある「国籍」問題はもしかしたら私たちの身の回りに起こりうるものとして考える必要がある。