ソーシャルX 企業と自治体でつくる「楽しい仕事」

松下電器産業(現:パナソニックホールディングス)の創業者である松下幸之助が「企業は社会の公器」という言葉を残している。企業は利益を追求することはもちろんのこと、社会に対して何かしらの貢献を行っていく必要があることを示している。

その「社会貢献」の一つとして行政との連携による、地域貢献なども挙げられるが、本書はそれとは異なる「官民共創」を挙げている。そもそも官民共創とは何か、そして官民共創を成功に導くためのポイントとは何かを本書にて取り上げている。

第1章「新しい官民共創が生まれる」

企業によっては新しい事業を探している所も多くあり、社会問題をビジネスに「活かす」所も少なくない。ではどのように「活かす」のか。本章では「子ども食堂」などを事例に出している。その一方で官民の連携の現実、さらには企業にとっても社会貢献と収益化とを結びつける難しさといった課題も本章にて列挙している。

第2章「官民共創の現在と未来、6つの環境変化」

元々官民共創はいくつかの所にて行われているが、現状としてはうまく機能しているのかどうか自体が難しい所である。著者が感じた現在の「官民共創」の実態と、これからの官民共創についての未来と変化についてを論じている。

第3章「官民共創を成功に導く6つのポイント」

かつて、佐賀県武雄市にて「TSUTAYA図書館」が話題を呼んだ。このTSUTAYA図書館自体も「官民共創」のモデルケースの一つとされている。本章ではこのモデルケースを引き合いに出しつつ「官民共創」を成功するためのポイントを6つ提示している。そもそも官民両方の「マインド」の変化も大事であり、なおかつどのように基軸を持ち、共創して行くかがカギとなる。

第4章「逆転の発想による新しい官民共創」

そもそも「官民共創」を確実に成功する「セオリー」は存在しない。しないからでこそ、官民双方で考えられないような「発想」が成功の要因にもなり得る。本章ではどのような「逆転の発想」についてを事例と共に列挙している。

第5章「明日から目指せる隣のまちの官民共創」

「官民共創」となると大がかりのように見える。しかしその「大がかり」になるものも、それ程の規模ではないものも含め、動ける要素はいくつも存在する。明日からどのように動くことで官民共創につなげられるのかを本章にて取り上げている。

第6章「7人のキーパーソンが考える官民共創の未来」

本章では官民双方にて官民共創を実際に実施などを行った、あるいは研究などを行った7人のインタビューをもとに、実際の官民共創と、これからの官民共創はどうあるべきかを取り上げている。

第7章「民間企業から見た、これからの官民共創」

今度は民間の企業の側から「官民共創」についてである。社会貢献の面で良い話のように見えるも、第1章でも指摘されているように収益化の要素が薄いこと、さらには自身の持っている事業を蔑ろになってしまわないかという懸念もある。しかしながらこれからの企業の姿の中に官民共創があり、収益性を持ちつつ、官民双方でWin-Winの関係を築くこともまた企業のあり方として求められているという。

官と民の双方にてWin-Winの関係を持ちつつ、企業にとっても収益と社会貢献の双方の面で良い効果をもたらし、自治体の側にとっても地域サービスの質を向上させるなどの効果をもたらす「官民共創」。小さい所ではいくつかの所で行われるのだが、それが広がりを見せられるかどうか、それはモデルケースを次々と築いていくほかない。