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エッセイ

人魚はア・カペラで歌ふ

今月13日、作家・評論家の丸谷才一氏が逝去された。88歳という大往生であったのだが、個人的にはもっと生きてほしい気持ちでいっぱいだった。 書評文化の繁栄を願いで創設された毎日書評賞、私が書評集を出し、その賞を受賞したとき、丸谷氏からその表彰を受ける姿を一途に思いつつ、書評を書き続けた。もはやその願いが叶わぬものと知った時は悲しさと空虚さが広がった。ただ、一つの思いがよぎった。丸谷氏が描き、大きくし […]

もえいぬ~正しいオタクになるために

「下妻物語」や「ロリヰタ」など少女小説を数多く上梓し、いつしか「乙女のカリスマ」と呼ばれた嶽本氏、その嶽本氏が自ら「オタク」と公言し、オタクの変遷をエッセイにてさらけ出している。さらに「オタク」ではなく「ヲタク」としての自分を投影しながら「現実」を超越した「「超」現実」を表した「萌え」を定義している。 「哲学」が絡んでいるように見えるが、その「萌え」でさえも「哲学」そのものであることを定義している […]

世界を、こんなふうに見てごらん

動物の見る「世界」は実に不思議なものである。本書は動物行動学者が綴った動物の視点と自らの視点をあわせ持ったエッセイ作品集である。 全部で10編のエッセイと1編の講演録が収録しているのだが、チョウをはじめサル、クラゲ、イルカなど多種多様な動物についても描いており、どの動物一つ一つの紹介をしている文章に動物そのものの躍動感を感じてしまうことさえある。動物を見る愉しさ、そしてその行動を知る愉しさを優しい […]

象の背中で焚火をすれば

「地震」と「原子力」 今年はこの2つの単語が頭から離れられないと言っても過言ではない。3月11日に起こった「東日本大震災」は東北どころか日本全体にとっても大惨事と言える。そこから復興をしている矢先に台風12・15号が日本を直撃し、復興の道のりが遠のいている印象にある。 本書は阪神淡路大震災をはじめとした地震、原子力、そして政治を風刺したエッセイ集である。 <像の背中で焚火をすれば>. […]

もの書き貧乏物語

「作家とは儲からない職業である」 果たしてそうなのだろうか。当てはまると思う方もいれば、そうではなく儲かる職業だと思っている人もいるのだという。「人間もいろいろ」であるとするならば「作家もいろいろ」なのかもしれない。 本書は週刊誌の記者・編集者を経て、フリー・ジャーナリストとなった方のもの書きに関する雑記と呼ぶべき一冊である。これから「もの書き」になりたいひと、もしくは「もの書き」になっている人に […]

黙読の山

「批評とは何か?」「書評とは何か?」 その答えはまだまだわからない。もしかしたら一生その答えを見つけに、本を通じて旅に出るという形なのかもしれない。他の方はどう答えるかわからないが、私だったらそう答える。 本書は現代史作家のエッセイ集であるが、本をはじめとした様々なことについて「批評」をしながらまとめたエッセイ集と言える。 様々な文学作品を一冊紹介していくようなものではなく、むしろエッセイの中に作 […]

鏡の向こうに落ちてみよう 有栖川有栖エッセイ集

ミステリー作家として有名な有栖川有栖のエッセイ集である。有栖川有栖の小説は読んだことがなく、彼の作品に触れるのはエッセイが初めてである。小説だとストーリーによって話を展開していくものであるが、エッセイはそれとは違い、著者自身の「体験」や「感想」、「思索」と言ったものが多くなる。それだけあって、著者自身の作風で日常や嗜好を愉しむことができ、かつあまり触れられることのない著者の意外な一面について触れる […]

「紙」と共に去りぬ

本書もその意図でタイトルを決めたと述べているが、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」を捩った一冊と言える。本書は簡単に言うと出版界の行く末について書かれた一冊であり、電子書籍化についても言及している。最近では紙媒体の危機と叫ばれていることを考えると本書がこのようなタイトルになっているか、含蓄がいく。 第1部「「紙」とともに去りぬ」 出版社のことについて書かれた一冊と書いたが、本書の著者は出 […]

YELL!(エール!) 東日本大震災チャリティーブック

(株)オトバンク 上田様より献本御礼。 2011年3月11日午後2時47分、世界は大きく変わった。 地震・津波・地盤沈下により多くの命、家、財産が失われてしまった。現在でもその傷跡は深く残っているだけではなく、余震も頻発していることから余談を許さない状況である。 本書は1日でも早く復興できるように、という願いからアスコムの編集部が結集して様々なエピソードを集め心から元気にしようという願いから出版さ […]

田舎の日曜日――ツリーハウスという夢

本書は浅間山の山麓で25年以上も山小屋で生活を続けている方の自伝+詩集である。 浅間山は長野県と群馬県のちょうど県境に位置する山で一昨年にも噴火が起こっている活火山として知られている。そのため火口付近には近づくこともできず、登山も他の山以上に危険を伴われる。 とはいえ浅間山には避暑地や浅間園、白糸の滝などスポットも数多くある。 著者は詩人であるため、各章に詩がちりばめられている。それも楽しめるのだ […]