CATEGORY

短編集

おとぎカンパニー 妖怪編

明けましておめでとうございます。本年も「蔵前トラックⅢ」をどうぞよろしくお願いいたします。 新年最初の書評はこちらです。 —- 本書はタイトルにある「おとぎカンパニー」三部作の3つ目にあたる一冊である。おとぎ話に出てくるキャラクターが会社を構えて、活動を行うというようなショートショートと呼ばれる一冊であるが、本書は「妖怪編」のため、古今東西の妖怪たちが会社をつくって活動をするというもの […]

百年と一日

「さよならだけが人生だ」 これは元々井伏鱒二の言葉で有名のイメージだが、中国大陸における唐の時代において干武陵と呼ばれる詩人がつくり、井伏鱒二が意訳したものである。しかしいつしか井伏鱒二が発した名言として有名なものとして挙げられる。 もっとも日常の中で、どうしても「出会い」と「別れ」がある。その中でも長い人生の中でたった一日なのかも知れないのだが、一日の出来事の中では、人生のターニングポイントとな […]

ママナラナイ

本書のタイトルにある「ママナラナイ(ままならない)」は辞書を引いてみると、 思いどおりにならない。自由にならない。「大辞林 第四版」より とされている。人生はどうしても思い通りに行くことはなかなか難しい。そう考えると誰しもが人生は「ままならない」とも言える。 それはさておき、物事にしても「ままならない」とおもえることがたくさんある。本書の主人公は不動産会社に勤めているのだが、仕事にしてもプライベー […]

比例区は「悪魔」と書くのだ、人間ども

本書の著者は元お笑い芸人で「セーフティ番頭」でコンビを組んでいた。かつて存在した「爆笑オンエアバトル」でも出演したことがあるのだが、2010年にコンビを解消、そして職を転々としながら、2014年に作家としてデビューし、そのデビュー作である「神様の裏の顔」で「第34回横溝正史ミステリ大賞」を受賞し、現在に至っている。 本書の話に入るが、本書は少し形の異なる短編集である。なぜ「形の異なる」と書いたのか […]

四月のミ、七月のソ

本書は短編集であるのだが、韓国の日常を描いているのもあれば、人間的な悲しみやむなしさ、さらには生きている世界の残酷さを描いている。 母国でもある韓国の事情はもちろんのこと、著者自身イランを旅したなかで得てきたこともまた、短編集の中に収録されている。 叙情的でありつつ、寂寥感と言う言葉が似合うような物語が多くある。日本でも「諸行無常の響きあり」という平家物語で有名なフレーズがあるのだが、その「諸行無 […]

みなさんの爆弾

人には誰しも、何らかの「爆弾」を持っているという。物理的に爆弾を持ってしまうと銃刀法違反にあたり逮捕されるため持っていないのだが、例えば怒りの導火線となる「逆鱗」もまた爆弾の一つである。もっと言うと、過去にあった出来事で生まれた「傷」をえぐる、あるいは塩を塗るようなこともまた「爆弾」として扱われる。 本書はその「爆弾」を持ちながらも、不器用に生きていく女性たちを描いた短編集である。方や中学生、作家 […]

われらの世紀 真藤順丈作品集

「戦い」と言う言葉は戦争だけに扱われる言葉だけではない。スポーツにしても、過酷な運命に対抗するときも、自分自身の精神と身体を賭しても「戦う」姿がそこにある。 本書はその「戦い」と、戦いを通じて、生きていく姿を描いた短編集である。 方や第二次世界大戦の中での「戦い」、方や民族の誇りを賭けた「戦い」、方や芸道の高みへ登るための「戦い」とそれぞれの立場からの「戦い」が記されている。 短編集であるだけに、 […]

「ほのお」や「ほむら」といった言葉がある。漢字に直すと「炎」にもなり、「焰」にもなるが、その違いとは何か。それは、 「火」より激しいとされる「焔」は、「炎」より激しく燃えているものを指しています。Tap-biz「焔の意味・使い方3・類語4・英語訳5・各分野でみる「焔」」より抜粋 とある。「炎」は赤く燃えていることに対し、「焔」はガスコンロで火を出したときと同じ青く燃えていることを指しているという。 […]

トランスヒューマンガンマ線バースト童話集

「童話」と言うと、非常にわかりやすく、子供でも読みやすいようにつくられ、なおかつためになるものがほとんどである。 しかしながら、本書はSFにしたものは良い。それどころか展開そのものをエキセントリックなものになっているため、「新手の短編集」といった扱いにした方が良いかも知れない。 ちなみに本書は「シンデレラ(灰被り姫)」「竹取物語」「白雪姫」「さるかに合戦」「おむすびころりん」「アリとキリギリス」を […]

伊達女

「独眼竜」として恐れられ、なおかつ「心に鬼を棲まわせた」と言わせるほど苛烈な性格を持っていた伊達政宗の周囲の女性は、美しくも、あたかも「女傑」と呼ばれるような女性たちがいたという。 よく伊達政宗のような性格を持つ男を「伊達男」と呼ばれていたが、その女性版としてタイトルとして銘打ち、伊達政宗を彷彿とさせる周囲の女性たちを取り上げた短編集である。 5人の女性をそれぞれ主軸とした物語ではあるのだが、それ […]