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短編集

私のことならほっといて

本書の表紙を見て「ほっといて」と言われたらどうするか。文字通り放っておくのか、それとも、キレイな女だから助けるといった意見もあるのかもしれない。ある意味ナンセンスの光景から「ほっといて」と言われると、どうしたらよいのかわからない、どう突っ込めばよいのかわからない、といった思念も持ってしまう。 それはさておき、本書は女たちが快感を求めるためにアレコレ行う短編集である。ただその「アレコレ」は裏切りにや […]

ヘディングはおもに頭で

大学受験という重要な試合に敗北し、浪人という再試合を待ちながらアルバイトを転々としながら、フットサルに思いを馳せる青年の物語である。主に東京の北千住や永田町など東京23区近辺を舞台に描いている。しかしフットサルに目覚めたのはちょうど大学受験に失敗したときであり、完全な初心者の状態から始まった。その初心者の中でドリブルやヘディングと言った技術をフットサルの試合を通して、磨いていく一方で、読書会にも参 […]

月岡草飛の謎

本書は架空の俳人である月岡草飛の謎について追っている短編集である。もっとも作品集を見ていく中で月岡草飛の放蕩ぶりや、突飛な行動などが目立つなど、俳人というよりも、ある意味「廃人」と言うほかない様な人物のように思えてならないが。 自由気ままに生きる月岡草飛の周りには、異質なものが舞い込むのだが、実際に欲望のまま突き進んでいった先が異世界なのだから、ある意味ナンセンスな物語である。よくあるラノベの異世 […]

すべての愛しい幽霊たち

「幽霊」と言うと「怪談」を連想してしまうのだが、本書はそれとは大きく異なる。「幽霊」であるのだが、家族の「幽霊」であり、幽霊になってしまったことによる、家族に対する「喪失感」を描いている。 家族というと、家族模様それぞれ異なるのだが、多くは心の支えもあれば、大切な存在と言った意見もある。本書の主人公の一人に芸術家がいるのだが、既に年老いており、家族も失い、だんだんと孤独感を増していった。さらに他に […]

インスタント・ジャーニー

もしも世界一周の旅をするのであれば、数ヶ月ほどかかるかもしれない。しかも昨今は新型コロナウイルスの影響により、入国制限している国もいくつかあり、なおかつ旅行をするにもどうしても避けてしまうような時である。 ただ、空想の「旅」であれば、いつでもどこでも、何度でもできると言うのだから便利である。しかも本書はそれを行うことができるショートショートの一冊である。本書の帯には「1話5分」とあり、しかも全部で […]

セヘルが見なかった夜明け

本書の著者の経歴を見るだけでも一つの物語がつくれそうなのだが、その著者は描く物語は何とも繊細であり、なおかつ短編集でありながら、短編1編の中に大きな風呂敷を広げるほどダイナミックな表現に富んでいる。 ちなみに現在は作家の面でも輝いているのだが、元々は政治家・法律家であり、トルコ政府と武装組織との和解訳を務めるほどの人物である。大統領選にも2回出馬した。ちなみにトルコの大統領選ができたのは2014年 […]

組曲 わすれこうじ

著者は、7年前に芥川賞を受賞したのだが、受賞年齢が最高齢であり、現在も破られていない。元々小さいころから物語を描き始め、26歳の時に「毱」でデビューしたが、その後は執筆はしているものの、表には出ておらず、ようやく出てき始めたのは2010年代に入ってからのことである。 現在公に出ている点では「寡作」と言う分類に入るのだが、一つ一つの作品が短編であることが多く、一編一編が不思議なつくりをしており、不思 […]

穴あきエフの初恋祭り

人との距離と「コミュニケーション」、密接にあるものは、時として近づいたり、離れたりするようなことが往々にしてある。 本書はその距離とコミュニケーションの両方を描く7編の短編集であるのだが、そのコミュニケーションは同じ国や地域だけというものでなく、国を離れたり、さらには動物の垣根を越えたりするようなやりとりが目立つ。 特に表題作はエフという意味がかなり意味深であり、なおかつ外国人の名前を漢字で当て字 […]

ぼくの死体をよろしくたのむ

本書は短編集なのだが、ある種のつながりを持っているようでいてならない。その繋がりの多くは「動物」と言える。しかしどのような動物かというと、ありとあらゆる動物が入り交じっており、なおかつその動物と人間との関係がそれぞれの短編によって異なっている。あたかも「万華鏡」の如く。 しかしそれらの関係は「生」と「性」の2つの要素がある。それは動物だけでなく人と人との関係もまた2つの要素が醸成されている。その醸 […]

友情だねって感動してよ

青春と言うべきか、衝突と言うべきか、少年・少女たちの人間模様をこれでもかというくらい青臭く描いた短編集である。おそらく「思春期」、あるいは「青年期」と呼ばれるほどの多感な時期であるだけに、わかり合いたいといった感情を持ちながら、人間関係の衝突を繰り返していく。 その「衝突」を通して、心的な「傷」を突くことが往々にしてある。その傷を越えて、友情を見出していくと言うものである。 「青春」とはいったい何 […]