CATEGORY

短編集

恋する狐

本書は狐などの物の怪が出てくるため怪異モノかと思ったら「恋する」というタイトルを冠している通り、怪異モノでありながら、恋愛・ハートフルの要素も盛り込まれた短編集である。 物の怪というと怖い印象を持ってしまうのだが、本書に出てくる物の怪はいずれもいたずら好きでありながら憎めないような印象を持ってしまう。怪談のようでいながら感動ものの小説を読んでいるような感じがしてならなかったため、ある種の違和感を持 […]

あした咲く蕾

本書は、朱川湊人氏の短編集であるが、朱川氏の小説は当ブログでも何度か紹介したこともあり、作風はよく知っている。どういった物かと言うと、女性を主体としている作品もあれば、暖かみのある作品も存在する。 本書もまた暖かみのある作品あのだが、短編集一つ一つに性格を持っており、優しいタッチのものもあれば、「カンカン軒怪異譚」といった「異色」と呼ばれるものもある。どのように異色なのか、と言うと、怪異作品そのも […]

いつか、この世界で起こっていたこと

昨日と同じく短編集を取り上げるが、本書は東日本大震災の悲しみを実在では無く、むしろ風刺を込めた物語として作られた作品である。もっとも印象づけられているのが 最初の所である「うらん亭」というもの。これは福島第一原発事故のことを描いている。他にも「波」は三陸などを襲った大津波のことを表し、「無く男」は放射能汚染や風評被害にまつわることをあぶり出し、「チェーホフの学校」は、今から28年前に起こった「チェ […]

ショートカット

本書は短編集で表題の「ショートカット」を始め、「やさしさ」「パーティー」「ポラロイド」の4編から成り立っている。一つ一つの作品に暖かみを持っており、それでいながらも人間くさく描かれている。それでいながら表題である「ショートカット」の名前の如くそれぞれの「心の距離」を描きつつも、ショートカットして、近づけさせるように作られている所もなかなか面白い。 人間くさいながらもせつなく、暖かみのある作品である […]

水平線の歩き方

本書は小説ではなく「脚本集」である。「集」であるのでいくつかの脚本が収録されているが、本書は選りすぐりの3本取り上げている。 <水平線の歩き方> 本書のあとがきにも記しているが、著者の50本目の節目となる作品である。ちなみにこのタイトルの舞台演劇も2008・2011年の2回上演されている。 本作の冒頭を見ると、あたかも「ホラー」と思わせてしまうようなところから物語は始まる。 「ホラー」であり、「日 […]

GF(ガールズファイト)

美しくも殺伐としたタイトルである。 本書はタイトルのとおり少女たちの戦いを映し出した短編集であるが、戦いの「対象」はそれぞれ異なる。異性の男性なのか、それとも同姓である女性なのか、はたまた自分自身の中にある弱い心なのか、はたまた今の世間を相手にしているのか、テーマによって異なる。 <キャッチライフ> 毎年、春と秋にとあるキー局が放送する長時間のバラエティ番組をフィクション化したものである。その中の […]

空色バトン

本書は「別冊文藝春秋」という雑誌の2010年5月号から2011年3月号までの分を収録した短編集である。 普通短編集は様々な主人公がそれぞれのストーリーを描くため、「一粒で何度も美味しい」というのが多く、そのたびに当ブログでは全体、というよりもとりわけ印象に残った作品を中心に取り上げることが多い。 しかし本書は単なる短編集ではない。本書のタイトルにある「空色バトン」の如くそれぞれのストーリーをそれぞ […]

ブルーハーツ

85年に結成し、95年に突如解散した「THE BLUE HEARTS」。このグループが残した歌の数々は今でも私たちの心に強く残している。 「リンダリンダ」「TRAIN-TRAIN」「終わらない歌」・・・と挙げるだけでおきりがない。 「THE BLUE HEARTS」が結成された頃に生まれた私は、彼らのライブは聞いたことがない。しかしCMなどで聴く機会はある。聴く度に「若く」「青臭く」、それでいて「 […]

私のおとぎ話

宇野千代氏は小説家である一方で服飾デザイナーや編集者、実業家など「多芸多才」を地で行くような方であり、さらに数多くの男性遍歴を持つ、といった波乱の人生を歩んで行った方で有名である。本書には同じ小説家の瀬戸内寂聴氏の推薦文が記されているが、数多くの男性遍歴がある、波乱にまみれたという点で通ずるものがある。 小説としてはそれほど多くなかったものの、自らの人生をモチーフにした作品が多く、惹きつけるものが […]

ありえない恋

「恋」には色々な形がある。喜怒哀楽、移ろい、思い出、距離、時間と本書に表される「恋」を挙げてみてもきりがない。 本書は8組のカップルがそれぞれどのような恋をしたかを描いている。カバーイラストも含めた絵も含めても、まるで少女漫画を読んでいるかのような恋物語が詰まっている。 8組の恋模様が描かれている作品であるが、私が最も印象を受けたのはそれではなく、とある恋愛小説家への手紙。少し角度を変えると、「も […]