CATEGORY

青春

ラブ・オールウェイズ

元々恋愛作品を取り上げている著者の中でも、著者本人が「特別な本」と銘打っているのが本書である。本書が出版される2年ほど前、ちょうど本書の短編集が連載している2012年に本書に掲載されている挿絵の引用元である絵本作家・伊藤正道氏が55歳の若さでこの世を去った。その引用元となった作品も伊藤正道氏の遺作と言える「僕への小さな旅」などから絵・文章が取り上げられ、なおかつ本書の最終話には伊藤氏に捧げるために […]

甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺

お菓子は色々な甘みを持っている。特に和菓子の場合は、餅や餡子、砂糖など、様々な材料でもって彩りで視覚を、そして、繊細な甘さでもって味覚を堪能することができる。本書で紹介される和菓子一つ一つは繊細な甘さを持っているだけではなく、本書で紹介されている和菓子それぞれに物語が存在する。 本書の話に移るのだが、本書は天才肌の和菓子職人の居る和菓子店が舞台である。その和菓子職人の息子2人だが、叔父たちに乗っ取 […]

憧れの女の子

本書のタイトルを見ると「憧れている女の子がいる」というように見えてしまうのだが、表題作はそうでは無く「女の子」を持つ事に憧れるという意味合いでつけられている。本書はもうすぐ三人目の子供を産もうとする母親を主人公にした夫婦を描いている表題作の他に、短編が5つ収録されている。 特に本書で強調しているのは「男女」の風景であるが、子供の産み分けもあれば、夫婦仲、さらには婚約関係、恋愛、そして親子と様々な「 […]

真実への盗聴

盗聴と言っても実際に盗聴器を使った事件を扱った作品では無く、主人公が遺伝子治療によって常人を遙かに上回るほどの聴覚を持つ事で、秘密を聞き・知ることで「盗聴」として成り立つというものである。 本書は結婚してからとる企業を退職し、新しい起業に転職をする際、ある企業の事業部長から「スパイ」として斡旋されることとなった。スパイとして斡旋された企業は受けようとした企業の子会社。しかしその派遣先で知られるのは […]

ライオット・パーティーへようこそ

世界に目を向けてみると、エジプトをはじめ中東諸国、ヨーロッパ・アメリカ、さらには台湾や香港などでデモが起こっている。そのデモが暴徒化して「暴動」に発展することもしばしばある。日本でもデモはほぼ毎日の様に日本中の至る所で行われているのだが、そもそもの本質が異なる。 日本ではプロ市民による市民団体などおおよそ30代~50代ほどの中高年の方々が主導する場合がほとんどなのだが、前者は10~20代の若者たち […]

窓の向こうのガーシュウィン

本書のタイトルにガーシュウィンがいるが、ガーシュウィンというと、自分自身吹奏楽をやっていたせいか、歌劇「ポーギーとベス」や「ラプソディー・イン・ブルー」が挙げられる。 ちなみにガーシュウィンという名を持った音楽家は2人おり、前述の曲を作曲したジョージ・ガーシュウィン、ジョージの実兄で、弟と同じくポップスやクラシック音楽に旋風を吹かせた作詞家のアイラ・ガーシュウィンがいる。 本書のいう「ガーシュウィ […]

春待ち海岸カルナヴァル

恋愛には年齢の関係が無い。そのことを証明づけられている一冊と言える。だからといって本書の主人公は50代や60代ではなく、39歳の「熟女」と呼べる様な女性である。その女性は未婚であり、今の時代でも「行き遅れ」や「負け犬」と言うような言葉で結婚できない女性が罵倒されるような言葉を受けてしまう年頃である。晩婚化と呼ばれる時代でも、である。 その女性は海沿いのホテル「カルナヴァル」を経営に携わっている。本 […]

夜市

「夜市(よいち)」は簡単に言うと夜に店を出す市場の事を言い、本書は主人公の家からかなり離れた公園で開かれていた不思議な夜市を舞台にしたホラー作品である。しかしホラー作品と言ってもヒューマンドラマも入っており、読み終わると非常に心温まる感じになる。 まずなぜ「不思議」なのかと言うと、本書で挙げられる「夜市」は妖怪たちが様々な「モノ」を打っていることにある。もっと言うと「モノ」は物体もあれば才能など目 […]

ぼくたちが見た世界―自閉症者によって綴られた物語

自閉症と言う病名を聞くことがあるのだが、「自閉症」と言うのはいったい何なのだろうか。調べて見ると、 「早期幼児期に発生する精神発達障害。対人関係における孤立、言語発達の異常、特定の状態や物への固着などを示す。脳機能障害によると考えられる。早期幼児自閉症」(「広辞苑 第六版」より抜粋) とある。自閉症は精神障害の一種であるが、その実態・原因・対象法はまだまだ研究段階にあり、俗説や誤謬説もあり、認知は […]

落日の譜―雁金準一物語

団鬼六氏は今から3年前に亡くなられたのだが、彼が生み出した作品の多くは「官能作品」、それもSMものが非常に多かった。一時期断筆するものの、そののち親交のあった最後の真剣師・小池重明の生涯をつづった「真剣師・小池重明」がベストセラーとなり脚光を浴びた。もともと著者は大の将棋好きで、「将棋ジャーナル」の刊行にも尽力を尽くしたと言われている。もちろん自身もアマチュア将棋の競合でアマ七段の資格を持っている […]