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小説

祝言島

2006年に起こった架空の事件。しかしその事件は謎が謎を呼び、さらには担当していた警察官が突然姿を消し「迷宮入り」の状況になった。そして12年後の2018年。主人公がとあるドキュメンタリー映画と出会うことになる。それが本書のタイトルにある「祝言島(しゅうげんじま)」である。 このタイトル自体がドキュメンタリー映画でありつつ、本書の全ての事件につながるものである。しかもその島に関連した事件も長きにわ […]

静かな終末

2019年11月に逝去したSF小説の大家が残したショートショートのうち、本書は選りすぐりで50編収録している。 ちなみに収録されているショートショートの内容というと、SF作品と言うよりも日常的なものもあれば、日常的でありながらもナンセンスなタッチでつくられているもの。もっと言うとSFと、本当の意味で「多種多様」と言う言葉がよく似合う。 元々SF作品の大家であるが、それだけでなく、長編作品を生み出す […]

滅びの園

いつもある日常が突然の出来事で一瞬にして変わる。そのようなことは過去にも起こったことがあり、これからも起こることがある。しかし本書で出てくる「突然」は「未知」のものである。いわゆる「宇宙人」か「未確認生物」なのかは不明だが、有害で、無尽蔵に増殖し、地球を飲み込もうとする勢いで、「滅び」を迎える。 その危機的状況にある中で、登場人物たちはどのように相対するのか、そしてそれぞれの思いがどのように「交錯 […]

株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者

人生は何が起こるかわからない。うまく行かない時もあれば、捨てたものではないと思う時もある。 本書は仕事も家庭も全て失った男性が一風変わった会社に働くようになる。しかもその会社名が本書のタイトルにある会社である。その会社は場所・時間を跨いで、手紙の配達を行う会社である。しかも男性が所属するのは配達不能になった人たちの手紙を直接届けるというものである。その先々で受取人たちと出会うことによって、男性の考 […]

カナコと加奈子のやり直し

もしも人生の中に「やり直し」があるとしたら、あなたはどうするか。私の場合はやり直したい部分はあるのだが、実際にやり直すとなると、その後の人生がどのように変わり、なおかつどのような自分になるのかという「恐怖」がどうしても支配する。 とある女子高生が過去に自殺し、幽霊となった少女。その少女が高校教師と出会うことから物語は始まる。その幽霊は「人生のやり直し事業」に参加することを持ちかける。それに参加する […]

雨の日は、一回休み

「おじさんだってつらい」 この言葉がどうしても頭から離れられない一冊である。「男女雇用機会均等法」が施行される前はおじさんたちは頑張れば活躍できる土壌があった。しかし先述の法律が施行され、また社会的な風潮が変わってからは、実力などが伴わなければ、淘汰される。それは「おじさん」とて例外ではない。 本書はそのおじさんの悲哀を5編描いている。方やセクハラ疑惑をかけられ四苦八苦し、方や女性後輩と昇進争いに […]

レーテーの大河

舞台は大東亜戦争終結後から1964年の東京オリンピックにかけての期間を描いている。特に終戦直後の混乱の中で日本・満洲における激動の中で「戦災孤児」として生きてきた3人、そして関東軍として満洲に赴いていた日本兵2人が本書の主軸になる。 戦後の激動の最中で行われたとある「任務」を巡り、様々な出来事に巻き込まれる。それが東京オリンピック開催までの約20年にも及ぶ長い闘いだった。しかもその「任務」は「戦争 […]

ミライヲウム

人に触れると、その人の未来が見えるという不思議な体質を持った男性が、付き合っていた女性に触れた瞬間に見たバッドエンディング。しかしそれを打破すべく奔走する。 バッドエンディングがなぜ起こるのか、未来を変えるために、新しい未来を生むために進み出す2人の姿はミステリーに見えながら、2人の恋愛模様を鮮やかに描いている。 能力自体がファンタジーでありながらも、その上で、彼氏の視点からではあるが、恋愛を育む […]

ないものねだりの君に光の花束を

人には何かしらの「個性」がある。しかしその「個性」を否定するか、あるいは気づかないといったこともあり、そのことによって「自分には『個性』がない」と否定的に見てしまう人も少なくない。そのような人となると、かくいう私も昔はそうだったのだが、相手に対して個性の「ないものねだり」をしてしまう傾向にある。 本書は個性が無いと思ってしまい「ないものねだり」をしてしまう女子高生。しかも自分はずっと「脇役」だと認 […]

情熱の砂を踏む女

スペインは「情熱の国」というイメージがあり、なおかつステレオタイプのイメージとして「闘牛」がある。現にスペインでは年数十回バルセロナの「ラ・モニュメンタル」という闘牛場で、行われている。 闘牛自体はスペインに限らずポルトガルやフランス、さらには形は違えど日本でも行われているが、「闘牛」というと「スペイン」というイメージがつよい。もっとも歴史的にも中世から行われた記録があり(諸説ある)、多いときには […]