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小説

月岡草飛の謎

本書は架空の俳人である月岡草飛の謎について追っている短編集である。もっとも作品集を見ていく中で月岡草飛の放蕩ぶりや、突飛な行動などが目立つなど、俳人というよりも、ある意味「廃人」と言うほかない様な人物のように思えてならないが。 自由気ままに生きる月岡草飛の周りには、異質なものが舞い込むのだが、実際に欲望のまま突き進んでいった先が異世界なのだから、ある意味ナンセンスな物語である。よくあるラノベの異世 […]

1R1分34秒

本書は言うまでも無くボクシングを題材にしている。タイトルにしても挿画にしても、どう見てもボクシングであることがよくわかる。しかしタイトルのところでもしKOとなると、あっけないというイメージを持たれるのか、それともKOを奪った選手の強さを際立たせるか、と言ったところである。 事実、有名な話になっているのだが、本書が出たのは昨年の1月。出る前年の10月に井上尚弥とファン・カルロス・パヤノがWBSSの初 […]

ジグソーパズル48

タイトルを見ると、「AKB48」に似せてつくっているような印象である。しかし本書は女子高生たちが様々な事件に巻き込まれながらも、解決に導いていくという物語である。しかも同じ高校、さらには同じ学級のクラスメートたちであり、それが全員で48人いるから「48」と名付けている。 女子高生ならではの青春を謳歌しているかと思いきや、ことあるごとに事件が起こり、青春どころではなく、事件の推理を行っていくような流 […]

世界で一番のクリスマス

まだ先の話であるのだが、12月はクリスマスのシーズンである。新型コロナウイルスの影響により、どのようなクリスマスになるのかは未知数であるのだが、それぞれのクリスマスがあることには変わりない。 その「それぞれ」という度合いが強くあるのが本書である。主にアウトローと言われる男女たちがどのような境遇の中でクリスマスを迎えるのかについて描かれている。 クリスマスの時期というとときめくような時期なのだが、本 […]

W県警の悲劇

「警察官の鑑」として周囲からも評価されていたとある警部が、上梓である警視から極秘任務を与えられたところから物語は始まる。その任務の中身は謎の死亡事故である。その謎の死亡事故を巡ってのトリックや解決までに導いた物語である。 ざっくりというとこのような物語となるが、詳細については踏み込めない。理由としては、本書の帯に、 「ネタバレ厳禁!」 と書いてあるためである。もちろん当ブログでもネタバレしながら取 […]

すべての愛しい幽霊たち

「幽霊」と言うと「怪談」を連想してしまうのだが、本書はそれとは大きく異なる。「幽霊」であるのだが、家族の「幽霊」であり、幽霊になってしまったことによる、家族に対する「喪失感」を描いている。 家族というと、家族模様それぞれ異なるのだが、多くは心の支えもあれば、大切な存在と言った意見もある。本書の主人公の一人に芸術家がいるのだが、既に年老いており、家族も失い、だんだんと孤独感を増していった。さらに他に […]

黄金夜界

著者の橋本治氏の最期の一冊である。なぜ「最期」と記載したかというと、本書を描き終えた後の2019年1月、肺炎のためこの世を去った。橋本氏は言うまでも無く作家として、さらには評論家として多芸多才に富んでいた。 本書の話に入るのだが、元々明治期のベストセラーに尾崎紅葉の「金色夜叉」がある。最愛の恋人を奪われ、その怨恨から高利貸しとなり、復讐を行うというものである。それを現代版にアレンジしたのが本書であ […]

アウグストゥス

紀元前にローマ帝国が席捲し、「パクス・ロマーナ(ローマによる平和)」をもたらした。その基礎を築いたのが、ガイウス・ユリウス・カエサルだが、後を継いだのがカエサルの養子であるアウグストゥスである。武装蜂起や内乱などを戦い抜き、ローマ帝国を築き、初代皇帝となった。世界で初めて「帝国」という「国家」をつくり上げ、元首政を敷き、「パクス・ロマーナ」となった。最も大きな功績であるのだが、細々とした功績を挙げ […]

茶屋四郎次郎、伊賀を駆ける

茶屋四郎次郎という名は戦国時代から江戸時代にかけて3人存在した。戦国時代において活躍した方が初代、関ヶ原の戦いで活躍した方が二代目、江戸時代において特権商人として巨万の富を得た三代目といる。 ちなみに本書で取り上げている「茶屋四郎次郎」は初代であり、戦国時代において徳川家に仕えながら活躍を遂げてきた後に、呉服商に転身したエピソードを描いている。ちょうど本能寺の変に伴って国同士の戦いが激化していくな […]

本を守ろうとする猫の話

本書は日常のようでいて、実はファンタジーである。というのは古書店を閉店し、親族に引き取られそうになった時に、人間の言葉をしゃべる猫が現れた。そこから物語が始まる。古書店の本がたくさんあるが、その本に対して「ただの本」で終わらせるのか、それとも「本」に対してどう向き合い、救っていくか、そのことを描いた物語である。 私自身は仕事柄、本と向き合うことが多々ある。毎日のように書評を行っているためであるのだ […]