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小説

をちこちさんとわたし

気難しい男と記憶を持たない女とのデコボコの物語であるものの、その物語は面白いように進んでいくような、見るも不思議な一冊と言える。 不思議であるがゆえに謎が謎を呼ぶのだが、読んでいて「良い意味で」わけがわからなくなる。もちろんストーリーがめちゃくちゃなわけではなく、むしろ整っているのだが、その整い方が「不思議」さを醸し出し、それが物語の面白さへとつながっていく。 文章も現代文よりも少し昔の古典と現代 […]

北緯14度

日本の北緯は最北で、おおよそ北緯44度、最南ではおおよそ25度くらいである。では本書のタイトルである「北緯14度」はどこにあたるのか。調べてみるとチャドやスーダン、イエメン、インド、ミャンマー、タイ、ベトナム、カンボジア、フィリピン、セネガルなどにあたる。特にアジア圏の国々が多く見られる傾向にあるが、それらの国々は赤道直下にある国と言っても過言ではない。 ちなみに本書はというとその中の「セネガル」 […]

福も来た―パンとスープとネコ日和

本書は「パントスープとネコ日和」シリーズの第2弾にあたる一冊で。様々な食が出てくる一冊であり、なおかつ、料理とともに物語もつくられる。 もちろん本書の舞台は主人公が自ら開店させたレストランを舞台にして来客するお客とともに、どのようなエピソードがあるのか、そのことを取り上げている。 本書の中に「日々を丁寧に生きています」とあるように、つくりも丁寧であり、人間模様も丁寧に描かれている。そのためか、繊細 […]

歌姫メイの秘密

母親とともにとある新興宗教から逃げ、複雑な境遇の中で育ってきた少女は歌の才能があった。その才能はやがて「歌姫」と呼ぶにふさわしいようになっていったのだが、その少女は生き別れの実父を探しに行くというのが本書の根幹にあたる。 その少女の名前が「メイ」と呼ばれているために、本書のタイトルは「歌姫メイ」と銘打っている。メイの父親を探す、もとい父親の住んでいる家探すために旅をするメイはその道中である男と出会 […]

誰かが足りない

本書の表紙を見るとテーブルと椅子が4つある。これは何を意味しているのかとふと疑問に思ったのだが、本書の目次を開くとおのずと「レストラン」であることがわかる。そう、本書は予約を取ることですら難しい小さなレストランを舞台にした「6つ」の物語である。「6つ」は簡単に言うと6組のお客様が、それぞれのドラマを持ってきて、紡いでいる。 6つの物語でもそれぞれお客様が異なる。老夫婦もいれば、青年だけもおり、若い […]

残り全部バケーション

何ともハッピーなタイトルの一冊であるのだが、本書の主人公は「裏家業」をやる2人組である。「裏家業」というと全くと言ってもいいほど穏やかなものではないのだが、その2人組は何ともデコボコぶりがあり小気味良い展開であるのが良かった。 全体で五章に分かれているのだが、一貫して裏家業の2人組が中心であるのだが、周囲の人物がそれぞれで異なる。そのことなる中で変わる人間模様はもちろんのこと、その変わってきた中で […]

abさんご

本書は第148回芥川賞を受賞した作品である。もっと言うと史上最高齢で芥川賞を受賞した作者であり、作品である。しかし本書は中編でありながら、小説のあり方を大きく覆すような一冊である。 何が覆しているのかというと、本書には人を指すような「固有名詞」が一切ない。しかももっと言うと途中までは横書きで左読みなのだが、最後の一篇だけは縦書きで右読みとなっている。そう考えると今まで小説を読んだ方々にとっては「何 […]

西洋菓子店プティ・フール

お菓子は俗に「嗜好品」と呼ばれており、無くても生きてはいけるものの、衣食住の幅をきかせるなかでは、なくてはならないものの一つでもある。またお菓子と言ってもスナック菓子はもちろんのこと、洋菓子・和菓子など大きなカテゴリーがあり、種類も豊富にあるため、お菓子好きであれば色々と食べても飽きない。 しかしそのお菓子にも「物語」が存在する。そこで本書である。本書は頑固なおじいちゃんと、パティシエールとの奮闘 […]

イルミネーション・キス

季節は11月。そろそろクリスマスに向けて色々なイルミネーションが見られるようになる。そのイルミネーションでときめくようなデートなどのシチュエーションを連想する部分もあるのだが、その中でも本書は「キス」を題材にした短編集である。 本書で取り上げられている5つの「キス」のほとんどは女性から見たものを描いているのだが一つ一つの世界が幻想的であり、もちろん現実にも限りなく近い形で描かれている。なおかつキス […]

ラジオラジオラジオ!

私自身テレビをあまり見ない一方でラジオを聞くことが度々ある。AMやFMもさることながら、最近ではインターネットでも生・録音問わずに配信される、いわゆる「ネットラジオ」も出てきている。番組、そしてその番組によって流れる音楽もヴァリエーションが多く、聞いていても飽きないのが魅力である。もっとも釘付けにならずに済むのだから勉強などをしながら聞くというのも良い魅力として挙げられる。 私事はここまでにして置 […]